それでも、黒部市の人口規模のゆえか、YKKグループの巨大さゆえか、「地域づくり」の観点からは、地元とYKKグループの協働には、まだまだ伸びしろがあるように見えた。市内で偶然、言葉を交わしたUターン者も、同様の感想を語っていた。また、パッシブタウンの家賃は首都圏の相場に近く、タクシーの運転手は地元の標準的な家賃や住宅ローンを引き合いに、心理的な隔たりを言葉ににじませていた。
黒部市やその周辺が今後、どのような変容を遂げていくのか、少し長いスパンで注目していきたい。
新高岡「かがやき」臨時便減便の波紋
長野市では、長野駅の真正面に建つ商業ビルの空きフロアに、全国チェーンの総合ディスカウントストアが入居し、これまでとは少し違った空気のにぎわいが戻っていた。地方銀行系のシンクタンク・長野経済研究所は、2017年の『経済月報』10月号で、長野県飯山市と富山県高岡市を取り上げたリポート「北陸新幹線延伸に見る地域活性化の動き~二次交通整備の重要性~」を掲載し、北陸地方に対する県境を越えた関心の深まりと検証の進展を感じさせた。
このほか、市内では、1992年から新幹線駅の誘致活動を進めてきた千曲市が12月初め、誘致活動を正式に中止した判断も話題に上っていた。
富山駅前では、再開発に伴って移転してきた専門学校が2017年4月に開校しており、隣り合う18階建てのホテルとマンションの建設が進んでいた。また、新高岡駅前では全国チェーンのビジネスホテルや居酒屋が営業し、開業当初とは雰囲気が一変していた。
ただ、富山市でも高岡市でも、最も大きな話題となったのは、新高岡に停車する「かがやき」の減便問題だった。
詳しい経緯は、2015年8月の本連載や『週刊東洋経済』2017年12月09日号で記したが、1日1往復だけ新高岡駅に停車していた臨時便の「かがやき」運行が、2017年12月以降は週末・
ただ、JR西日本は「かがやき」減便と同時に、「新高岡商品開発プロジェクト」の構想を公表していた。地元と協力して、首都圏や関西圏から誘客を図り、新高岡駅を拠点とした旅行商品の開発を進める内容だ。
地元は、今後も「かがやき」
「かがやき」定期便化に注いでいたエネルギーが今後、地域内にどう振り向けられ、望ましい循環を生むのか。地元の動きから目が離せない。
「信越交流会」でリノベーション議論
調査の最終日は新潟県入りし、上越市で開かれた第4回「信越県境地域づくり交流会」に参加した。2017年8月の本連載記事で紹介した交流会は、今回も120人が参加し、「上杉家」「リノベーション」をテーマに活発な報告や議論が展開された。メーン会場は、日本最古級の現役映画館として知られる「高田世界館」、近隣のリノベーションされた民家も会場となった。各地の新幹線開業後の対策が「観光振興」「交流人口増大」といった切り口に寄りがちな中、今回の交流会も議論の核に、地元の文化の深掘りや、まちづくりの実践報告が据えられていた。
特に、新潟県十日町市での起業・リノベーションや、長野市・善光寺門前での地域活動とリノベーション、さらに金融機関が先頭に立った長野県・湯田中温泉のリノベーション、上越市の公務員の意識改革など、各地の参考になりそうな事例報告が心に残った。一方で、この場での議論と、黒部市で進むまちづくりの接点について、あらためて考え込んだ。
調査を終えて、北陸新幹線「はくたか」に乗り込む前、上越妙高駅前を少し歩いた。東口ではビジネスホテルの建設が進み、この駅前が広域的な移動の拠点となる兆しが見えたように思われた。西口に建つコンテナ商店街「フルサット」は、カフェなど3店舗が新たに加わり、8店舗にパワーアップしていた。
「開業特需」の次の段階へ、新幹線沿線地域はどう進んでいくのか。そして北陸新幹線と北海道新幹線は、どのような共通点と相違点を持ち、どんなタイアップができるのか。その可能性を探るフォーラムを1月20日、
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