キーマンが明かす新幹線「札幌駅」問題の真相 利便性高い「現駅案」が負けた本当の理由
JR札幌駅のどこに北海道新幹線のプラットホームを設置するか。混迷した新幹線札幌駅問題は、JR北海道が土壇場で提案した、札幌駅の東側に新たにホームを設置する「大東案」で5者会議の合意となった。この5者の意向を整理すると、JR北海道 vs. 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、鉄道・運輸機構)という対立構造と、様子を見守る第三者(国土交通省・北海道・札幌市)にみえた。
鉄道・運輸機構は現駅案(2012年に認可された在来線ホームに新幹線駅を併設するという認可案とそれを一部修正した認可見直し案)を一貫して推していた。一方、JR北海道は大東案を推すというより、現駅案を避けたいというのが実情だろう。現駅案では、工事期間中にエキナカおよび駅ビルの商業施設の一部休業を余儀なくされ、収益減につながりかねないためだ。
現駅案のほうが安く造れたのに
事業費は現駅を改良する現駅案が570億円に対し、大東案は645億円。JR北海道の案は75億円も割高だ。その差額を負担するという重荷を背負ってまでして、JR北海道は大東案を主張した。
国交省は、JR北海道が差額を負担するなら大東案で決着を図りたい。この問題がこじれたこと自体に嫌気している。札幌市と北海道は新幹線に対して関心が低い。駅ができれば、細かい場所はどうでもいい。駅の位置に合わせて再開発をするだけという姿勢が見え隠れした。
対立、と書いたけれども、鉄道・運輸機構とJR北海道の関係は良好だ。ただ守るべき信条が違った。問題が膠着した中で、3月12日の5者会議で流れが変わった。鉄道・運輸機構が「大東案」を了承し、地元経済関連団体の意見を踏まえたうえで、3月29日に合意に至った。
筆者は新幹線の可能性を信じる者として、将来の北海道新幹線利用者として、新幹線を国民の財産と考える者として、現駅案を主張する鉄道・運輸機構にもっと頑張ってもらいたかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら