キーマンが明かす新幹線「札幌駅」問題の真相 利便性高い「現駅案」が負けた本当の理由
なぜ、鉄道・運輸機構は主張を取り下げ、合意に至ったか。北海道新聞4月1日付記事「決着「大東案」(上)流れ変えた5者協議」のなかで、興味深い記述があった。
大東案になった背景は、北海道新聞の記事のように、地元国会議員の働きかけなのか。だとしたらその議員とは誰か、気になるところだ。調べてみると確かに北海道選出の与党議員の中に“大物議員”がいた。
吉川貴盛氏。1950年生まれの67歳。北海道第二区から衆議院議員に当選6回で現職。鉄道・新幹線関連は「整備新幹線等鉄道調査会副会長」「JR北海道対策プロジェクトチーム座長」「超電導リニア鉄道に関する特別委員会副委員長」だ。政府の「整備新幹線に係る政府・与党ワーキンググループ メンバー」でもある。北海道の鉄道問題に関しては、確かに大物だ。
ただ、吉川氏は、今から2年半前、2015年9月9日の北海道新聞のインタビュー記事では「現駅案がベスト」と語っていた。もし、この議員が吉川氏なら、なぜ「大東案」に転じたのだろうか。
VIPルームを造れない
4月のある日、議員会館に吉川氏を訪ねて真意を聞いた。2015年の記事については、当時はJR北海道が西案と東案を出したばかりで、それに比べれば認可された案である現駅案のほうがふさわしいという感覚だったようだ。
現在、吉川氏は大東案を支持している。「たしかに大東案は在来線から離れている。しかしこれは、動く歩道とか、エスカレーターの設置で解決できる。JR北海道がそういうんだからできるだろう」。
また、吉川氏は鉄道・運輸機構が推す現駅案にも問題があったと言う。「在来線の運行に差し支えないようにと、発寒中央駅に引き上げ線を造って、札幌発着の列車を回送して折り返させるというけれども、発寒小学校の通学路の踏切が“開かずの扉”状態になる。鉄道・運輸機構はこの問題を解決できなかった」。
さらに、現駅案は、「コンコースの店舗を潰すだけではなく、VIPルームを造るゆとりもない」と言う。札幌市は2030年の冬季オリンピック・パラリンピック招致を目指しており、実現すれば、皇族が新幹線で札幌を訪問する際にVIP用の待合室が必要になるかもしれない。その点では「コンコースが幅広く、商業スペースが取れる大東案のほうが優れている」。
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