北海道新幹線、北陸新幹線など「整備新幹線」が相次いで部分開業を迎える中、基本計画止まりの路線の着工を求める動きが活発化している。
四国新幹線の情勢については、この連載でもかつて取り上げた。一方では、「ミニ新幹線」の山形新幹線「つばさ」(東京―新庄間)が運行している山形県を中心に、全線フル規格の「奥羽新幹線」(福島市―秋田市)の実現、さらには「羽越新幹線」(富山市―青森市)の着工を求める運動が加速している。
筆者は9月、山形県庁の要請に応じ、奥羽新幹線の建設促進組織のセミナーで基調講演した。そして、これらの「ポスト整備新幹線」路線を検討する際に、どのような課題が存在するか、どのような世界観を持つ必要があるか、提起する機会を得た。
地元に建設を待望する人々がいる以上、筆者は「ポスト整備新幹線」路線の着工を否定する立場は採らない。しかし、調査・取材を通じて、開業済みの地域で続く模索や苦悩を目の当たりにしている経験上、建設を積極的に後押しすることにもためらいを感じる。着工を求める地域は、その準備をどう整えていくのか――。地元の現状を記しつつ、奥羽新幹線の課題と意義を考えてみた。
青森まで3時間なのに…
「トップセールスで出かけた東京の大田市場で、若い人から、ビジネスで山形に行きたくないと言われてしまった。青森まで3時間で行けるのに、山形まで2時間40分もかかる、と。本当にショックを受けました」。9月20日、山形県新庄市で開かれた「最上地域奥羽新幹線整備実現同盟会」の設立総会で、吉村美栄子知事は力を込めた。
会場を埋めた1市4町3村、約240人の参加者がじっと聴き入る。東京からの時間距離は、山形市は今も青森市より近い。しかし、距離が倍もある本州の北端と、所要時間がさほど変わらない……釈然としない地元の思いが直に伝わってくる場面だった。名前が挙がった青森市から会場を訪れた筆者は、苦笑しながら、新幹線と「時間距離」、そして「心の距離」の関わりについて考え込んだ。
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