北海道新幹線は開業2年目の夏が過ぎた。現地での調査によれば、利用者数は前年比8割程度の水準で推移しているという。「開業特需」の反動減は織り込み済みとはいえ、今年7~9月に展開中の「青森県・函館観光キャンペーン」が終われば、沿線・周辺が一体となったキャンペーンは一段落し、地元の対応が正念場を迎える。
北海道の道南地域は、人口約44万人ながら、函館市を筆頭に多様な特色を持つ18市町からなり、面積も対岸の青森県に匹敵する。新幹線駅を取り巻く地域は、どのような変化に直面し、どんな未来を模索しているのか。その糸口を探るため、2017年6月と8月に渡島半島を訪れた。筆者の視界に入ってきたキーワードは「縄文時代にさかのぼる海を介した交流」、そして「北海道新幹線は北前船を超えられるか?」だった。
「北海道でない」イメージの地
渡島半島は、太平洋側の渡島地方と日本海側の檜山地方に大きく分かれ、北海道庁が渡島総合振興局を函館市に、檜山振興局を江差町に置いている。
実は、筆者にとって渡島半島は「近くて遠い」地域だった。修学旅行などで函館市や大沼国定公園を訪れ、また、北海道新幹線の開業前後に木古内町を調査した経験を除けば、学生時代、国鉄の松前線と江差線(すでに廃線・第三セクター化)に乗車したことがあるだけだ。公共交通機関で移動しづらいうえ、古くから和人が定住し、文化的に東北北部と似通った面が多く、「北海道であって北海道でない」イメージが強かった。周囲にも「道南=函館+大沼+駒ヶ岳」という感覚の人は少なくない。
6月上旬、木古内町観光協会の依頼で、北海道新幹線の活用法について講演した。その際、初めてレンタカーで渡島半島西部を調査した。また、8月末には江差町で講演する機会があり、引き続き、青森学術文化振興財団の助成による調査の一環として、渡島半島東部を回った。懐が深く、味わい深い地域であることを実感するとともに、北海道新幹線の開業がなければ、このエリアを訪れることはなかっただろう、とも想像した。
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