北海道新幹線は「海路が生んだ絆」を超えるか

北前船で全国とつながっていた「道南」の今

木古内町観光協会の講演では、津軽海峡を往来する船舶の情報を確認できるスマートフォン・アプリの活用、観光資源として「音」を意識することとともに、函館市以外では乏しい「箱館戦争」の情報を観光客に提供することを提案した。同協会は1週間も経たないうちに「道の駅きこない」に多くのポスターを張り出した。やがて、その掲示が好評を博していることが地元紙の記事でも紹介され、協会のスピード感に驚いた。

江戸時代末期の蔵をリノベーションしたカフェ「チャミセ」で語る室谷氏(右)=2017年8月(筆者撮影)

8月末の江差町での講演は、檜山振興局の依頼による「着地型観光の検討」がテーマだった。講演に先立ち、同振興局商工労働観光課の松田義人さんらの紹介で、江差町のまちづくりに長く携わってきた室谷元男さんにお話をうかがうことができた。場所は「活蔵拠点カフェ」を名乗るカフェ「チャミセ皐月蔵(さつきぐら)」。江戸時代から町内に残る蔵のうち、江戸末期に建てられた1棟を町が譲り受け、「江差町歴まち商店街協同組合」が町と檜山振興局の支援を受けて2014年にリノベーションした。

室谷さんは同組合監事のほか、「江差いにしえ資源研究会」会長など多くの肩書を持ち、津軽海峡を越えて青森県側の人々とも広く深く交わっている。「最も大切なのは地元の誇り。江差は、いわば一つの町ではなく、北前船の集大成です。自分たちが生きてきた歴史を紹介する『語り部』が100人いて、町の魅力を伝えられれば。私たちは『おカネが来てほしい』のではなく、『人が訪ねて来てほしい』のです」。その言葉を象徴するように、チャミセの隣には、地元の人々の表情を活写したモノクロ写真が並ぶ、静かでおしゃれなギャラリーがある。

新幹線が深めた江差と青森の連携

北海道新幹線の開業準備を契機として、江差町と青森県側の人々と連携が深まった。特に、津軽三味線の本場である五所川原市・金木町地区や、下北半島の佐井村との行き来が盛んになり、チャミセ開業時に支援を受けたり、「江差追分会」の青森県津軽支部が金木町地区に発足したり、といった動きがあった。最近は、江差町が、女性による町おこしグループ「津軽海峡マグロ女子会」の活動の舞台にもなっている。

江差町は人口約8100人ながら、往時の日本海の活況を感じさせる、雅(みやび)な空気が随所に漂う。旅行通の評価が高い個性的な高級旅館も町内にある。中心部の旧国道沿いは、家屋や店舗が街路事業「歴史を生かすまちづくり事業」を通じて、江戸~大正期の外観に再現、または修復保全され、「いにしえ街道」と名付けられた。

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