開業2年「北海道新幹線」特需消えて正念場へ 進まない駅前開発、集客や地元連携にも課題

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質疑では、永澤氏が、函館側の新幹線活用策として青森県内との各種連携の取り組み件数が5年で265件に及んだこと、それに応じて青函圏のキーパーソン同士の往来が活発化してきたこと、一般の函館市民には伝わり切っていないが交流は着実に深化していること、青森県側の積極的なPR姿勢に学ぶべき点が多いことなどを報告・指摘した。半面、青森県側からみれば強力な集客力を持つ国際観光都市・函館についても、北海道全体でみれば、集客や宿泊者数の確保、地元の連携体制づくり、さらには新幹線活用策について、努力の余地があることなどに言及した。

『北海道じゃらん』の満足度ランキングで総合1位に躍進した「道の駅きこない」=2017年9月10日(筆者撮影)

また、浅見氏は、道の駅や道南の状況について、「青森県側の売り込みに比べると、近隣の町村からの売り込みはまだ少ない。北海道新幹線の札幌延伸に向けて、他地域にのみ込まれないよう努力する必要がある」などと述べた。なお、「道の駅きこない」はオープン年度、『北海道じゃらん』の道の駅満足度ランキングで総合4位になり、2年目の2018年版では1位に輝いたことが、同年3月に公表された。

青森県内の参加者からは、「外国人観光客の流動の分析事例が参考になった」「飯山駅の報告から、新幹線の待ち時間をどう使うか、10分でできること、30分でできること、1時間でできることを観光客に提案できるよう努力したい」といった意見が出た。

交流への期待感しぼむ?

筆者はフォーラムで、この1年間、各地の調査で得られた知見と、小規模ながら青森・函館両市民を対象に実施したアンケートの結果を報告した。

アンケートの傾向は、前年に実施した同様の調査と大きく変わらず、北海道新幹線が、特に函館市民の本州方面への動きを加速させているとみられること、その一方で特急料金の高さを理由にフェリー利用を余儀なくされている人々が両市とも存在することなど、新幹線開業が沿線住民・生活の二極化を進展させている可能性を示す情報が得られた。

東京、札幌などからも駆けつけた参加者が会場を埋めた=2018年1月20日、青森市(筆者撮影)

ただ、開業特需というべき利用や記念イベントが一段落したせいか、「青函交流の行方」について「活発化していく」と答えた人の割合は、両市とも前年より大幅に少なく、逆に、「衰退していく」と答えた人の割合が、前年より多かった。さらに、「北海道新幹線が暮らしや経済、住んでいる市、青森県・道南地域にもたらした変化」については、全体的に、肯定的に評価した人が前年より少なく、特に函館市で「道南地域に良い影響をもたらした」と答えた人の割合が大きく落ち込んでいた。なお、両市とも、最も多くの回答者が懸案事項に挙げたのは「新幹線駅前の開発が進まないこと」だった。「駅前の呪縛」の意味や解消法について、さらに検討を重ねる必要性を痛感した。

次ページ今後、本格的な調査と検証の実施が期待される
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