内海氏は、北陸新幹線開業に伴って、上越市が首都圏直結の交通体系に組み込まれたこと、その一方で新幹線新駅の郊外立地に伴う交通利便性の変化や、上越新幹線との競合を懸念する声の存在など、全市・全県を挙げた一体感の醸成が困難であった事情を解説した。そのうえで「新幹線に地域が翻弄されるのではなく、新幹線をどう使いこなすかを考えるため、過去に学び、現在を知り、仲間と未来を語り合えるよう、地域づくりの基本から取り組むべきだと考えた」と、信越県境地域づくり交流会の原点を紹介した。
さらに、「地域づくりのための学習」「信頼関係醸成のための交流」「これらがもたらす連携・創発」を通じて、地道な地域づくり人材の発掘に取り組むため、組織ではなく個人を基調とした仕組みづくりの一環として、同交流会の開催・継続に携わってきた経緯を振り返った。
「1つの文化圏として再認識」
大西氏は人口2万人余りの飯山市が、周辺の著名観光地の情報と交通のハブとして機能することを目指し、飯山駅観光交流センターを整備した背景を説明した。特に、提供するサービスについて、飯山市など長野県の8市町村と新潟県妙高市が組織する「信越自然郷」の枠組みで、県境を越えて「食文化」「アウトドアレジャー」「リラクゼーション」など「保養獲得型」の商品・ニューツーリズムを目標としている点を強調した。さらに、その実現に向けて、アクティビティ情報の集約・発信や予約手配、用具などのレンタルと販売に加え、Wi-Fi電波を活用した観光客の動線の分析、「飯山市若者会議」などの企画を展開していることを紹介した。
信越自然郷エリアは、年間の観光客の入り込みが1000万人を数え、10日以上にわたって滞在する外国人観光客も増加しているといい、東北や道南に比べると恵まれた環境にある。大西氏は「信越自然郷の取り組みを通じて、関係者の顔の見える関係ができ、意思疎通しやすくなった」「信越県境地域づくり交流会によって、新たにさまざまなつながりや他地域への関心が生まれ、1つの文化圏として再認識できた」と交流の意義を評価する一方で、「さらなる観光客の受け入れには、地元の都合によるエリア設定や取り決めにとらわれない発想が求められている」と、まだ改善の余地があることも示唆した。
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