夫の死で「遺族貧乏」にならない家計の備え方 遺族年金と死亡保険でどうやりくりするか

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慶太さん死亡の場合は住宅ローンがなくなるので、侑梨佳さんと2人の「子」の家計は、慶太さんとともに生活していたときの6割ほどに減ったとしても、やっていけると思います。すると、年間360万円ほど(従前の600万円の6割)が必要ということになります。侑梨佳さんは、遺族基礎年金と自分の収入で年間223万円を手にするので、差し引き「年間約130万円が不足する」ことになりますね。

侑梨佳さんの8歳の長女が成人するまでと考えれば、残り12年で1560万円の不足です。一方で、侑梨佳さんの家計には1400万円の貯蓄もありますので、生命保険で1500万円ほどの保障を持っておけばよいでしょう。

このように必要(死亡)保障金額を見極めたうえで生命保険の加入を考えますが、大事なのは、必要貯蓄率の範囲で生命保険料を決めることです。

月々3000円弱の収入保障保険でカバーも

子どもが成長していくにつれ必要保障額は減りますし、貯蓄も積み上がっていきます。つまり、必要保障額は右肩下がりに減少していきます。経済合理的に生命保険を持とうとすれば、同じように右肩下がりに保険金額が減っていく「収入保障保険」がよいでしょう。

例えば保障が必要な期間を「侑梨佳さんの8歳の長女が大学を卒業するまで」と考えれば、残りは14年ほど(22歳で大学卒業の場合)。そこで「46歳で加入し60歳まで、万一の時には毎月10万円を受け取れる収入保障保険に加入する(契約時点の受け取り額は約1600万円)」と、同じネット生保で保険料は月々2990円です。

この先、配偶者が働かないとは考えにくいのですし、もしもの時の話ですから、この保険金額を見て少なすぎると思う必要はありません。大切なのは、毎月の必要貯蓄額を守りながら支払える保険料にすることです。「もしもの時」を心配しすぎて、保険金額を大きくして保険料負担が大きい方が多いので、見直しをご検討ください。

自営業の慶太さんの場合とは違って、会社員など厚生年金の被保険者の人は、前述のように「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の両方が対象になります。実際にいくら受け取れるかは要件がありますので、遺族年金額を踏まえて死亡保障額を考えることが大切です。

また、一つ気をつけなければいけないのは、2017年8月に老齢年金の受給資格期間が25年から10年に短縮されたものの、遺族年金の保険料納付要件は25年のままです(経過措置の特例として、保険料納付済み期間が全体の3分の2以上、または直近1年間の未納期間がないことを満たすこと)。

大切なこととはいえ、ご相談に見えた侑梨佳さんには楽しくない話になってしまいました。しかし、その顔は晴れやかでほっとしていました。「新しくできた娘とうまくやっていけるように頑張ります」と。どんなに辛いことがあっても、それが人を永遠に苦しめることはないのだと改めて思った次第です。勝木さんご一家の幸せを心からお祈りしています。

岩城 みずほ ファイナンシャルプランナー・CFPⓇ

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いわき・みずほ / Mizuho Iwaki

特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、お客様の利益を最大限に、中立的な立場でのコンサルティングほか、講演、執筆を行っている。
慶応義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年間活動後、会社員を経てFPとして独立。著書に増補改訂版『人生にお金はいくら必要か』(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)、『やってはいけない!老後の資産運用』(ビジネス社)、『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)、『結局、老後2000万円問題ってどうなったんですか?』(サンマーク出版)ほか多数。HP

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