実質賃金下落の本質は国民への「インフレ税」だ

「普通の人の景気認識」が圧倒的に正しい理由

なぜ2013年~2015年の実質賃金が世界金融危機のときに迫る落ち込みを見せたのかというと、同じ期間に名目賃金がまったく増えていなかった一方で、ドル円相場で大幅な円安が進行したことで、輸入品の価格が大幅に上昇してしまったからです。

さらにその過程において、消費増税までが追い打ちをかけて実質賃金の下落に拍車をかけてしまったのです。私の試算では、2013年~2015年の実質賃金の下落幅4.2ポイント減のうち、輸入インフレの影響は2.5ポイント減、消費増税の影響は1.7ポイント減となっています。

確かに、円安によって大企業は収益を大きく伸ばし、一見すると日本経済は明るさを取り戻したようにも見えました。しかし実際には、円安インフレにより食料品やエネルギーなど生活に欠かせないモノほど値上がり率が大きかったので、多くの世帯で家計を預かる主婦層はそれらのモノの値上がりに敏感に反応せざるをえず、実質賃金の下落を肌でひしひしと感じながら、いっそう節約志向を強めていったというわけです。

賃金の上昇を上回るインフレは、見方を変えれば、「隠れた税金」であるということができます。国民は円安によりインフレ税を支払い、そのインフレ税は輸入元の海外企業の利益に変わっているのと相違がありません。要するに、円安によって国内の輸出企業の収益が飛躍的に高まったのと対照的に、国民の賃金上昇は物価上昇に割り負けしてしまい、購買力はいっそう落ち込むことになったというわけです。

実質賃金と個人消費は相関性が高いという事実

次に下のグラフをご覧下さい。実質賃金と個人消費のグラフを重ねて相関関係を検証すれば、実質賃金が大幅に下落したときにのみ個人消費が減少するという傾向がはっきりと表れています。

2013年以降の5年間の実質賃金の推移を振り返ってみると、2013年は0.8ポイント減、2014年は2.6ポイント減、2015年は0.9ポイント減と3年連続で減少を続けた後、2016年には0.6ポイントの増加に転じたものの、2017年には再び0.2ポイントの減少へと逆戻りしています。(与野党かかわらず多くの政治家は、「ポイント」とすべきところを「パーセント」と言っていますが、基準年から見た数値の増減をパーセントとするのは誤りです)。

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