スギ花粉の量は、前年の暑さが大きく関わってきます。暑い夏の翌年はスギ花粉の量は増大しますが、昨年の夏は酷暑の期間が短く、今年のスギ花粉の量は昨年以上とはならないようです。気管支喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患は遺伝要因が大きいのですが、遺伝だけでなくさまざまな環境因子にも大きく影響されます。
私たち人間には、命と健康を守るため、免疫機能(体内に抗原が入ると、抗体を作って防御反応を示す)が備わっています。アレルギーはこの免疫バランスが崩れた状態で、乳児期では牛乳や卵などのアレルギーが、成人ではダニやカビの胞子・ハウスダスト(ホコリ)、そして花粉などの吸入性アレルギーが増えます。日本の住居は古くからある隙間の多い日本家屋から、アルミサッシや鉄筋コンクリートなどの密閉性の高い欧米風の家に変わってきました。そうした家は暖かいのですが、湿気が多くなりカビが繁殖しやすくホコリが増えます。また、魚介類や野菜・米が中心だった日本人の食に牛乳・卵・肉類が増え、一気にアレルギー疾患に悩む患者さんが激増したのです。
花粉症はくしゃみ・鼻水・鼻づまりの3大症状を主訴に、目をはじめ体中のかゆみや、それらの症状に悩まされての不眠など、多岐にわたります。ゴルファーにとって、特にスギ花粉は大敵。かつての世界大戦で、日本国土の多くの樹木は切られてしまい、戦後の植林政策で山林には成長の早いスギが植えられました。期待通りに成長したスギはどんどん増え、国有林の多くを占めていると言われています。スギの多い地域では、春先の風の強い日は向こうが見えないほど、黄色いスギ花粉で覆われます。
アレルゲン(アレルギーの原因となる抗原物質)を防ぐのが、アレルギー疾患の第一の予防。とはいうものの、ゴーグルを着けてゴルフをするのは難しい。近年、抗アレルギー剤は非常に進化し、眠気を起こしにくくパイロットも使用していると言われる薬剤も発売されています。対策マスクや最新の目薬も効果が大きいでしょう。症状のひどい方には、ステロイド注射もよいでしょう。ただし、ステロイド剤は糖尿病や甲状腺機能障害などの方は使用できません。よく副作用が問題視されますが、正しく使えば効果的で、こうした薬剤がなければ暮らしていけない方もいらっしゃる。1シーズンほぼ1回の治療で済むこともあって、内服薬と合わせて使えば有効な治療法です。ほかにもアレルギーの減感作療法がありますが、なかなか続かないというのが現状です。
風邪の予防と同じように手や目を洗い、服に付いた花粉は室内に入る前によく払い落とすことが大事。いったん花粉症にかかると、なかなか症状が治まりません。その対策には、早めの予防と準備が効果アリと言えるでしょう。
1950年鹿児島県生まれ。平石クリニック院長。丸山茂樹、片山晋呉などのプロゴルファーをはじめ、野球、Jリーグなどのトップアスリートやプロチーム、企業や大学のスポーツクラブの健康管理や技術指導を行う。アーティストのコンサートドクターとしても活躍。
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