ノジマ社長「使い物にならない」発言の波紋 買収した携帯電話販社の停滞ぶりに焦り?

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家電量販業界は「3年以内離職率が10~30%」(業界関係者)が普通で、そのため社員を大量採用する。ノジマも採用には積極的で、2019年にはグループ全体で約950人の新卒社員が入社予定だ。主軸である家電量販事業が順調に拡大していることもあるが、「自社育成した社員で子会社のテコ入れを図る」(ノジマ関係者)ことも背景にある。決算説明会では「ノジマからの出向者がITX店舗にて活躍」という点が強調される。

実際、ノジマの家電量販事業は大きく伸びており、ノジマの自社社員への「信任」は高まっている。2014年度の家電量販事業の売上高は1760億円だったが、2017年度は1990億円と約13%伸長。同じ期間で減収だったヤマダ電機、同約6%増のケーズHDなどのライバルと比較するとノジマの好調ぶりが目立つ。

好調の原動力となっているのが、まさに自社育成の社員だ。ノジマは家電販売において「コンサルティングセールス」という独自販売戦略を展開。ほかの家電量販各社が家電メーカーから派遣されてきたメーカースタッフも販売スタッフとして店頭で接客するのに対し、ノジマはメーカースタッフを排し、自社社員による販売に徹する。「メーカーのスタッフは特定のメーカーを勧める傾向が強い。自社で育成した社員ならば公平な立場でお客様の要望を丁寧に聞いて最適な商品を提案することができる。そのためのノウハウもある」(ノジマ幹部)。

ITXには逆風が吹いている

掃除ロボットや自動機能がついた高機能洗濯機、外出先からインターネットで操作可能なIoT家電など、共働き世帯の増加によって時短ニーズに応える高機能家電に人気が集まっている。これらは客が購入に踏み切るために店頭で十分な機能の説明が求められることが多く、「首都圏中心に展開しているノジマはコンサルティングセールスを通して、これらのニーズを的確に捉えることができた」(前出のアナリスト)とノジマの成長への評価は高い。

その一方、ノジマ入り後のITXは、想定したほど業績が伸びていない。ITXは、ドコモやauなど携帯電話キャリア大手の代理店として携帯電話販売を手掛けている。買収時の2015年3月期のITX単体の売上高は2463億。営業利益は54億円だが、2018年3月期はそれぞれ1877億円と41億円にそれぞれ縮小している。一部事業をグループ会社に移管した影響もあるが、買収発表時のインタビューで野島社長は「成長させる自信があったので、買収は全然悩まなかった」と話していた。その時と比べると「思ったより厳しくなってしまったのは事実」(前出の幹部)と認める。

さらに、総務省から携帯販売に対する規制が強化されると見込まれるなど、ITXへの逆風は続く。2015年のITX買収当時、時価総額約250億円のノジマが買収総額850億円でITXを買収した。その結果、約40%あったノジマの自己資本比率は14.3%まで低下。2018年12月末の自己資本比率は28.7%にとどまっている。社内からは「今回問題として報じられた社長の発言は一社員に対するものだけでなく、ITX社員の質に対する焦りもあったのでは」という声もあがる。

家電量販が好調なこともあり、カンボジアにノジマの店舗を展開しているほか、2019年に入ってシンガポールの家電家具小売り大手のコーツ・アジアを子会社化するなど、拡大路線を続けている。規模拡大は採用数の増加と社員のレベルアップが前提となるが、野島社長流の社員教育がうまくいくのか、未知数だ。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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