日本人は「人口減」で起こる危機を甘く見ている 最低賃金を上げ、自ら変わらねばならない

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だから、誰かが「日本人の変わらない力は異常」と言っていたことにも同感するのだそうだ。これだけの危機に直面していても自ら変わろうとしないのは、普通の人間の感覚では理解できず、異常以外の何物でもないと言い切るのである。残念ながら、そこには共感するしかないだろう。

なぜ、こんなにも頑なに変わろうとしないのか。変わる必要がないと思っている人たちは、こんな理屈を述べ立てます。
日本は世界第3位の経済大国である
戦後、日本経済は大きく成長してきた
日本は技術大国である
日本は特殊な国である
よって、日本のやり方は正しいし、変える必要はない(249ページより)

そして、アトキンソン氏が「変える必要がある」と指摘すると、次のような反論が返ってくるのだという。

日本はお金だけじゃない、もっと大切なものがあるんだ
前例がない
海外との比較は価値観の押し付けだ
今までのやり方は日本の文化だ
見えない価値がある
データ、データと言っても、データはいらない
さらに、本音を言う人は「俺はこれ以上がんばるつもりはないよ」と言います。(250ページより)

動かない日本を動かす方法

確かに、どこかで聞いたことのあるフレーズばかりだ。それはともかく興味深いのは、アトキンソン氏が耳にしたという「こうした偏屈ともいえる意見を持つ人が少なくないのは、日本人の平均年齢が上がっていることに原因があるという人もいる」という意見だ。

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40歳を過ぎると人間はなかなか変わろうとしないものだし、新しい考え方を受け入れなくなる傾向がある。日本は国民の平均年齢が40歳に近いので、社会全体が変化しづらくなってきているということだ。

しかし、仮にそうだったとしても、私たちは大きく意識を変えなければならない時期にきているのかもしれない。そして重要なのは、かたくなに動こうとしない日本という国を、どう動かすか、動かせるか。

日本企業は、自由にさせておくと、生産性を向上させる方向に向かわないだろう。アトキンソン氏も言っているとおり、それは歴史を振り返ってみれば明らかだ。だとすれば、手段はひとつしかないことになる。

すなわち、強制的にやらせることだ。そのためには、最低賃金の引き上げが最適だという考え方なのである。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

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