東芝の発表した太陽電池戦略、3つの点で要注目
東芝が、電力・産業用の太陽光発電システム事業を2015年度に売上高約2000億円規模へ育成する中長期計画を公表したことで、株式市場でも注目を集めている。
前08年3月期時点ですでに売上高8兆円弱に達している東芝にとって、7年後に約2000億円という事業規模そのものはさほど大きいとはいえない。だが、「東洋経済オンライン」では、今回の東芝の太陽電池戦略は3つの点で評価できると考える。第1には東芝そのものにとって。第2には重電セクターにとって。そして第3は「日の丸ソーラー勢」全体にとって、である。
第1の東芝にとっては、太陽電池分野への取り組み姿勢を明確としたことが評価できる。近年の東芝は原子力発電に傾注してきた。「買収前は国内向けに重点を置いていたが、それでは生き残りが難しいと考え、買収に踏み切った」(西田厚聰・東芝社長)として、06年には米国ウェスチングハウス・エレクトリックを傘下に収め、NAND型フラッシュメモリとともに原子力発電を「戦略的集中投資」の対象と位置づけてきたのである。その一方、二酸化炭素排出量低減のための研究開発や事業展開としては、「原子力発電や火力発電向けに経営資源を投入してきたため、太陽電池や風力発電などへは手が回らなかった」(西田社長)という事情もある。そこへ今回、社内カンパニーである電力流通・産業システム社に「太陽光発電システム事業推進統括部」を1月1日付で新設し、グループ横断的に太陽電池分野を育成する方針を打ち出すことにしたのである。同分野への世界的な関心の高まり、将来性や可能性などを考えれば納得できる動きといえるだろう。
第2の注目点としては、重電セクターにとっての意義だ。これまで太陽電池分野では、発電素子(セル)生産大手であるシャープ、京セラ、三洋電機といった家電や電子部品を手掛ける関西勢にばかり脚光が当たっていた感がある。だが、今回の東芝の戦略は、重電各社による太陽電池分野への寄与の可能性をあらためて注目させる契機となりうる。従来から明電舎が「発電素子は生産しないものの、それ以外の各種装置で太陽電池分野へ寄与する」という事業形態を推進してきが、東芝も同様の事業形態を採用するものとみられる。
西田社長はこう語っている。「たしかに、当社はシリコン半導体の集積回路では世界第3位級の企業。ただし半導体集積回路の企業が必ずしもシリコン基板系の太陽電池の生産も手掛けているわけではない。しかも、すでにシリコン基板系の太陽電池の生産を手掛ける企業は世界に数多くあるうえ、その光電気変換効率も約20%にまで到達している。そうした状況下で、今から東芝がシリコン基板系発電素子の生産を開始する必然性は小さい。むしろ、当社には、たとえば天候の変化に発電量が左右されがちという太陽電池の短所を補いうる、安全・長寿命な蓄電池である新型二次電池SCiBなどの技術がある。そうした技術で太陽電池の普及に貢献したい」。