東芝の発表した太陽電池戦略、3つの点で要注目

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 今後、太陽電池が住宅用のみならず産業用・電力用として活用されるとともに、日立製作所、東芝、三菱電機、富士電機ホールディングス、明電舎という「大手5社」をはじめ重電各社が活躍しうる各種装置の市場が拡大していくことを、今回の東芝の戦略は示唆している。

第3に、太陽電池分野に携わる日本の「日の丸ソーラー勢」全体にとっての意義も大きい。シャープ、京セラ、三洋電機、三菱電機をはじめとする日本の発電素子各社は、政府による導入支援策が一時途絶した05年ごろから、ドイツや中国など外国勢の追い上げにより相対的な地盤沈下を余儀なくされてきた。だが、長期にわたる高い光電気変換効率の持続などが要求される電力・産業用の需要拡大は、信頼性にまさる日の丸ソーラー勢が巻き返す好機といえよう。その電力・産業用へ東芝が各種装置で本格参入することは、太陽電池市場拡大の側面支援となる。

また、発電素子各社にとって、東芝そのものも大きな販売先となりうる。現時点では東芝が国内外のどの企業から発電素子を調達するかは定かではない。ただ、東芝では電力・産業用の太陽光発電システムの市場規模に関し、今08年度は約1.2兆円であり、15年度には約2.2兆円へ拡大すると想定している。その2.2兆円市場のなかで、東芝は事業規模約2000億円、つまり市場占有率約1割獲得を目標に掲げていることになる。当然ながら、日本の発電素子各社にとっても、東芝向けは大きな商機となりうるのだ。

太陽電池をめぐるサプライチェーンのなかで、日本勢は原材料となる珪石・金属シリコン・多結晶シリコンなどの「川上分野」では宿命的な弱みを持つ。だが、一方で発電素子や直交変換装置などの「川下分野」における技術的蓄積は世界首位級だ。今回の東芝の電力・産業用の太陽電池戦略は、そうした日の丸ソーラー勢の川下分野における強みに、さらなる厚みを加えうる動きといえるだろう。
(石井 洋平)


《東洋経済・最新業績予想》
(百万円)    売 上  営業利益 経常利益  当期利益
◎本2008.03  7,668,076 238,099 255,558 127,413
◎本2009.03予 7,600,000 125,000 145,000 60,000
◎本2010.03予 7,700,000 185,000 175,000 72,500
◎中2008.09  3,495,830 -23,468 -63,505 -38,454
◎中2009.09予 3,500,000 5,000 0 0
-----------------------------------------------------------
         1株益¥ 1株配¥
◎本2008.03  39.5 12 
◎本2009.03予 18.5 10-12 
◎本2010.03予 22.4 10-12 
◎中2008.09  -11.9 5 
◎中2009.09予 0.0 5 

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