東芝が中国サッカーを支援する理由 「B2B」で巻き返すニッポンブランド

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日本製品のスペックや価格が高すぎるから売れないのだと、家電の失敗の言い訳を繰り返してはなりません。高品質にふさわしいプレミアムブランドイメージ創りを目指すべきです。例えば、ルーヴル美術館の館内照明に東芝のLEDが使われていること、現在建設中の地上632メートルの「上海中心大厦」のエレベーターは三菱電機製であることなど、説得力ある事実を活用してブランド評価を高めることが重要です。

ところで、ふだん私たちがビルのエスカレーターのブランドをあまり気にしないのは、自分で選ぶことができないからです。ビルのエレベーターや空調設備は典型的な「Business to Business (B2B)」商品ですから、一般消費者は主要ターゲットではありません。新築ビルのデベロッパーや施工会社にエレベーターを売り込むためには、機種選定の責任者たちへ向けてブランドメッセージを発信し、ブランド経験を提供する必要があるのです。

B2CからB2Bへシフトする日本企業

日立、東芝といった日本を代表する総合電機メーカーは、家電やデジタル機器などのB2Cビジネス以外に、電力、産業用機器、建設機械、交通インフラ、ビルファシリティ、医療機器、情報通信などの巨大なB2B製品・サービスを持っています。そして、テレビやPCなどの消費者向け製品がカテゴリー全体としてコモディティ化し、韓国や中国ブランドに席巻されるにつれ、ニッポンブランドの稼ぎ場所はB2CからB2Bへと急速に変化しています。

中国市場でも、日立や東芝がエネルギー、スマートシティ、クラウドコンピューティングなどの分野で躍進中であり、それに伴ってビジネスの相手が消費者から企業へとシフトしてきています。

よく聞かれる質問に、「ブランドイメージで販売をけん引するのは一般消費者向けのB2C企業の戦略であって、B2Bではブランド論は通用しないのではないか?」というものがあります。確かに、企業や自治体の購買担当者がトップの承認を経て購買を決定するB2Bビジネスでは、イメージや情緒的価値よりも、効果・効率を追求する合理的な判断が優先されるのは事実です。

しかし、考えてみると購買ブランド決定の判断を下す人たちも、結局は人間ですから、購買候補製品の知名度、印象、他人の評判などに影響を受けるのはB2Cビジネスにおける一般消費者と同じです。例えば、情緒的価値が入り込む余地のなさそうな株式投資ですら、スターバックスのように常にEPS(一株当たり利益)以上にプレミアムが乗っている人気株が存在します。投資家は、企業が持つ夢やビジョンを買っているのだとも言えますが、単純に知名度やイメージに引っ張られている面も大いにあると思います。

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