今年のACL(アジアチャンピオンズリーグ)でも、前イタリア代表監督リッピが率いる中国の「広州恒大」が「ソウルFC」を破って優勝しました。柏レイソルをはじめとする日本勢が敗退したのは記憶に新しいと思います。Jリーグ勢は2008年のガンバ大阪を最後に優勝から遠ざかっています。
盛り上がる中国スーパーリーグの掉尾を飾るイベントが、「足協杯」と呼ばれる中国サッカー協会杯(日本の天皇杯のような、トーナメント形式のカップ戦)です。東芝は、2011年から3年間このイベントの冠スポンサーとなっています。今年は12月7日に決勝戦が行われ、「貴州人和」が常勝「広州恒大」に競り勝って優勝しました。
社会に根差したブランディングを
東芝は、中国のサッカーファンが注目するカップ戦に掲出する看板やテレビ中継を通して、企業ブランドの認知度を向上させるだけではなく、草の根レベルのスポーツ振興を通して中国社会に深くコミットしようとしています。
具体的には、青少年のサッカー振興を支援、子供たちとサッカーをテーマとしたインターネット用のショートムービーを制作するなど、中国社会に深く根ざしたブランド活動を行なっています。
昨年11月、サッカー協会杯決勝戦の時期に合わせて発表した、子供たちとプロ選手の交流を描いたショートムービー、「另一种温暖 (もう一つの温かさ、の意)」は、自社サイトや無料動画サイト上にアップされた11月1日から12月10日の間に、PVが1300万を超えました。そして、今年5月には中国広播電視協会から「ベスト・クリエーティブ賞」を受賞しています。
ショートムービーはTVコマーシャルと違い、「モノを売る」ためのメッセージではありません。あくまでブランデッド・エンターテイメントとして、発信ブランドの考え方や価値観を長尺で情緒的に伝えられますから、特に日ごろ一般の生活者になじみの薄いB2B企業にとってはとてもよいブランド経験提供のフォーマットです。微博(中国版Twitter)や微信(中国版Line + Facebook)などのソーシャルメディアもB2B企業が社会とつながるための有効なプラットフォームです。
中国のサッカーファンの中には東芝のB2Bビジネスのターゲットである購買決定者も含まれています。自分の子供のサッカーチームが東芝から支援を受けているお父さんが、中国企業の産業水処理システムの発注責任者である可能性もあるでしょう。
しかし、もっと重要なのは、進出した国や地域に深くコミットすることです。迂遠なやり方のようですが、B2B企業のブランディングは、社会全体と価値観を共有することを目指すべきです。東芝(中国)の桐山輝夫総代表は、2012年11月のサーチナ社のインタビューでこう語っています。
「事業を伸ばすことについては、一般の中国社会に調和していくのが重要なのです」「ネガティブなことを言い出したらきりがありません。中国の中で我々がやることは、『中国の事業を進めること』と『社会貢献』が2本の柱なのです。」「中国と日本の関係をよりよくしていく。中国市場に歩みを進めたいという方針に揺るぎはありません。」
これらのメッセージから、日本企業が学べることは多くあるはずです。
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