「パクリ」が許される作品と許されない作品の差 インスパイアやオマージュもパクリなのか

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また造形や世界観の点でいえば、宮崎氏本人も認めていますが、メビウス(ジャン・ジロー)の漫画『アルザック(Arzach)』(1974年頃)から多大な影響を受けています。特に、白い飛行物体(メーヴェ)に乗って荒廃した世界を飛び回るナウシカを象徴する造形と、白い飛行生物を駆る造形の持つイメージには、類似の枠を越えた一致を感じます。

実際、宮崎氏自身がジブリアニメ『ハウルの動く城』(2004年)のDVDの付録映像として収められたメビウスとの対談で、影響を受けた事実を語っていますので、『風の谷のナウシカ』が『アルザック』から影響を受けたことは明らかです。

自分が知らないことは想像できない

しかし、宮崎氏は過去作品や資料を効果的に使い、先行作品のよいところを吸収し、まったく新しい名作『風の谷のナウシカ』を生み出しているわけですから、『アルザック』に似ているからといって、そのオリジナリティーを疑ったり、作品の評価を下げたりするような人はいないはずです。

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宮崎氏の作品を事例に紹介しましたが、筆者が言いたいことは実にシンプルです。「パクリ」と聞くと、すぐに盗作とか盗用をイメージしてしまうかもしれませんが、実際の「パクリとは何か」について考えてみてほしいのです。

「人間は自分が知らないことを想像できない」という当たり前のメカニズムのことを考えれば、むしろ、多くの知識、多くの情報から学び、そこからさまざまにパクっていくことが、真に魅力的で、オリジナリティーあふれるコンテンツをつくり出していく源泉であるはずです。

一方で、単にまねただけ、単に模倣しただけ、あるいは手続きや手法に不備があった場合の「パクリ」には、大きなリスクと問題が伴います。「パクリ」や「パクる」ことは決して悪い概念や考え方ではありません。悪いのは、「正しい知識と技術を持たない」ことなのです。 

藤本 貴之 東洋大学総合情報学部教授
ふじもと たかゆき / Takayuki Fujimoto

1976年生まれ。専門は情報デザイン論、メディア構造論、ネット炎上の分析と技術など。最先端のメディア研究の知見から、企業や自治体を対象とした情報発信戦略などの実践的プロジェクトなども幅広く手掛ける。2017年から、日本で初めてとなる「パクリ」をテーマとした研究で日本学術振興会・科学研究費助成事業(科研費)からの助成を受け、その研究代表者も務める。日本グラフィックデザイナー協会・正会員。合同会社藤本情報デザイン事務所・執行役員クリエイティブディレクター、北陸先端科学技術大学院大学・教育連携客員教授、カリフォルニア州立大学ベーカーズフィールド校(CSUB)・Visiting Scholarなどを併任。

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