「パクリ」が許される作品と許されない作品の差

インスパイアやオマージュもパクリなのか

また造形や世界観の点でいえば、宮崎氏本人も認めていますが、メビウス(ジャン・ジロー)の漫画『アルザック(Arzach)』(1974年頃)から多大な影響を受けています。特に、白い飛行物体(メーヴェ)に乗って荒廃した世界を飛び回るナウシカを象徴する造形と、白い飛行生物を駆る造形の持つイメージには、類似の枠を越えた一致を感じます。

実際、宮崎氏自身がジブリアニメ『ハウルの動く城』(2004年)のDVDの付録映像として収められたメビウスとの対談で、影響を受けた事実を語っていますので、『風の谷のナウシカ』が『アルザック』から影響を受けたことは明らかです。

自分が知らないことは想像できない

しかし、宮崎氏は過去作品や資料を効果的に使い、先行作品のよいところを吸収し、まったく新しい名作『風の谷のナウシカ』を生み出しているわけですから、『アルザック』に似ているからといって、そのオリジナリティーを疑ったり、作品の評価を下げたりするような人はいないはずです。

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宮崎氏の作品を事例に紹介しましたが、筆者が言いたいことは実にシンプルです。「パクリ」と聞くと、すぐに盗作とか盗用をイメージしてしまうかもしれませんが、実際の「パクリとは何か」について考えてみてほしいのです。

「人間は自分が知らないことを想像できない」という当たり前のメカニズムのことを考えれば、むしろ、多くの知識、多くの情報から学び、そこからさまざまにパクっていくことが、真に魅力的で、オリジナリティーあふれるコンテンツをつくり出していく源泉であるはずです。

一方で、単にまねただけ、単に模倣しただけ、あるいは手続きや手法に不備があった場合の「パクリ」には、大きなリスクと問題が伴います。「パクリ」や「パクる」ことは決して悪い概念や考え方ではありません。悪いのは、「正しい知識と技術を持たない」ことなのです。 

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