「パクリ」が許される作品と許されない作品の差 インスパイアやオマージュもパクリなのか
最後にレベル4は用法と意味の理解が最も難しいかもしれません。なぜなら「このくらいなら許される」「過去に敗訴した事例はない」「慣例的に許諾されている」「暗黙の了解」などといった認識で、仮にそれが違法であったとしても、公然とパクリが横行しているケースだからです。
もちろん、法的には明確な結論が出ている場合も少なくありませんが、文化や表現手法として定着していて、違法あるいは違法性があったとしても権利者が強く主張できないこともあります。
例えば、同人誌における二次創作は、明らかな著作権侵害に該当するものばかりですが、同人活動は日本の漫画・アニメ文化の下支えとなっているという認識が権利者の側にもあります。さらには、オリジナル作品が同人活動の二次創作によって知名度を上げたり、商業的成功をしたりしている場合も少なくないため、権利侵害によって権利者が経済的利益を得ているという逆転現象を生み出しているケースも珍しくありません。
有名作品の中にもあるパクリ
有名作品の中には、先行作品や過去作品をパクることで、成功している事例は数々存在しています。むしろ、インスパイアを与え、参考元になった先行作品が存在しているようなケースのほうが多いかもしれません。
日本の作品でも、例えばスタジオジブリの作品には、多くのインスパイア源、参考元、原作が存在していることでもよく知られています。もちろん、違法な剽窃や模倣や盗用を繰り返している、その作品にオリジナリティーがない、という意味ではありません。
インスパイアやオマージュの範囲内で、あるいはしかるべき手続きやルールの枠内で、参考にしたり、インスパイアされたり、あるいはリメイクや原作の再解釈をしたりしているというわけです。
むしろ多くの先行事例、先行コンテンツを参考にする宮崎駿監督の調査能力には驚かされます。例えば、スタジオジブリの前身会社であるトップクラフト制作の宮崎監督初期の代表作でもある『風の谷のナウシカ』(1984年)を見ていきましょう。
作品タイトルにもなっている主人公「ナウシカ」という名前は、古代ギリシアの叙事詩『オデッセイア』に登場する王女ナウシカア(Nausicaa)からとっています。『風の谷のナウシカ』の英文タイトルも「Nausicaa of the Valley of the Wind」ですから「ナウシカ」がオデッセイの「ナウシカア」からとっていることがわかります。