つらい「断食」にイスラム教徒が熱中する理由 ラマダーン体験者が語る何も口にしない苦労

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例えば、来世の報いを望んで礼拝する者や斎戒する者は、過去に犯した罪が許されるとも言われます。なかでも、ムハンマドに最初にコーランが下されたと考えられる「みいつの夜」は、ラマダーン月最後の10日の奇数日のどれかと言われ、この日の善行は1000カ月に勝るといわれています。

そのためラマダーン月だけは、しっかりとやるといって斎戒を頑張るムスリムもいます。普段の数倍で、日によっては1000カ月分なので、そりゃ、やらないわけないですよね。

善行が推奨されるラマダーン月ですが、何といっても毎日の日没後の解放感がたまりません。日没後には断食明けの食事――イフタールを取ります。

半日間、胃腸を使っていなかったので、いきなりメインを食べるのは危険です。ナツメヤシや水、あるいは甘いジュースなどで体を目覚めさせてから食事を始めます。料理はもちろんその土地によって異なります。

断食明けに食べるもの

イランであればイラン料理、バンコクでイフタールのご相伴にあずかったときには、やはりタイ料理でした。アメリカでは、イフタールの食事会をモスクで行っているところもあります。

『「サトコとナダ』」から考えるイスラム入門 ムスリムの生活・文化・歴史』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

イフタールを家で作る家庭も多いですが、ケータリングでということも近年では増えているようで、イフタール・セットなるものを作っているレストランもあります。また貧困者のために、裕福な人が食事をふるまう席が屋外に設けられる地域もあります。

ラマダーンはついつい食べすぎてしまって太ってしまうという話があります。筆者も知人の家にお呼ばれしているときには、いつも以上に豪華な食事で太ってしまいました。ラマダーンは普段以上に肉の消費が増え、普段以上にお金が使われる月でもあります。それがラマダーン月が明けるまで約1カ月弱行われます。

そして第10番のシャウワール月初日に行う「断食明け祭(イード・アル=フィトル)」を迎えます。この日は朝に祭日の礼拝を行い、特別な喜捨を行うことが一般的です。

椿原 敦子 文化人類学者

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つばきはら あつこ / Atsuko Tsuabkihara

1974年岐阜県生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(人間科学)。現在、龍谷大学社会学部講師。ムスリムを中心としたアメリカの移民コミュニティについての研究を行っている。著書に『グローバル都市を生きる人々――イラン人ディアスポラの民族誌』(春風社、2019年)など。

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黒田 賢治 中東・イスラム研究者

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くろだ けんじ / Kenji Kuroda

1982年奈良県生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科東南アジア地域研究専攻博士課程修了。博士(地域研究)。現在、国立民族学博物館現代中東地域研究拠点特任助教。現代イランを中心にムスリム社会の研究にたずさわる。

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