ベイスターズが17年ぶり「マルハ」と再会の裏側 マルハニチロが球団創設70周年スポンサーに

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2018年11月、鐵は阿部に面会し、70周年記念プロジェクトへのスポンサーシップを提案した。むろん、マルハニチロで先述のようなアンケートが行われていたことなど知るよしもなかった。

マルハニチロにしてみれば、スポーツを使ったブランディングを検討し始めたばかり。愛着あるベイスターズからの提案は、まさに「渡りに船」(阿部)だった。

ただ、阿部には確認しなければならないことがあった。意地悪な質問だと自覚しつつ、こう尋ねた。

「もし、この企画をうちが断ったら、TBSさんに持っていかれるんですか?」

鐵は即答した。

「それはありません。これは、マルハニチロさんとしかできない企画です」

鐵が明かす。

「アポイントの後、同席した営業部員からは『言い切ってしまって大丈夫ですか』と言われました(笑)。でも、球団創設からの歴史を考えれば、マルハニチロさん以外の選択肢はない。本心から、そう思っていました」

球団の思いを受け止めた阿部は、即座にこの企画を経営会議の議題に挙げた。

球団を手放してから時間が経っているとはいえ、愛が完全に消えたわけではない。社内にはベイスターズファンがたくさんいて、ブランディングを推進しようという企業戦略とも合致した。プランは瞬く間に会議を通った。

アレックス・ラミレス監督が着用しているのは復刻ユニフォーム(写真:横浜DeNAベイスターズ提供)

球団の歴代ロゴをあしらった復刻ユニフォームを着用する特別試合を計6試合開催するなど、ベイスターズとマルハニチロは、2019年シーズンを通して、さまざまな70周年企画を展開していくことになる。

また、マルハニチロは同社の冷凍食品「横浜あんかけラーメン」などのパッケージにベイスターズのロゴを使用して他社商品との差別化を図るほか、ベイスターズの試合やイベントに社員が関わることでコミュニケーションを深める機会にしたいと考えている。

再び交わったベイスターズとマルハニチロ

3月10日の下関でのオープン戦も、70周年記念プロジェクトの一環としてマルハニチロの冠ゲームとなるはずだったが、無情にも雨で流れてしまった(3月21日、横浜スタジアムで代替試合が行われることが決定)。

時代という波にもまれ、苦しめられながらも、形と名前を変えてしぶとく生き続けてきた企業とチーム。かつて別々の海に進んだ2つの船は、奇しくも球団創設70年という節目の年に再び航路を交えた。

いま新たに強く結び直された絆は、多少の嵐ではびくともしない。

(文中敬称略)

日比野 恭三 スポーツライター

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ひびの きょうぞう / Kyozo Hibino

1981年、宮崎県生まれ。PR代理店勤務などを経て、2010年から6年間『Sports Graphic Number』編集部に所属。現在はフリーランスのライター・編集者として、野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを取材対象に活動中。

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