災害時に突然起きる「自宅の停電」への対処 停電時に住宅用蓄電池はどう機能したか

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このような状況下で、蓄電池には日中の発電電力をためることで、需要と供給のバランスを保つことが期待され、そのことが普及を後押しすると考えられるのだ。

2つ目として、2012年に始まり太陽光発電などの普及を強く後押しした再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の終了(2019年11月から順次)がある。これに対して、太陽光発電のユーザーは、電力小売業者か、電力を供給する家庭と需要家の間で需給バランスを保つアグリゲーターと契約する方法があるが、そのほかに電力を自家消費する方法もある。

自家消費の場合、蓄電池を新たに設置することで光熱費を大幅に削減し経済的な暮らしにつなげられる可能性があるため、現在、蓄電池メーカーは太陽光発電ユーザーに積極的に提案活動を行っている。前述のセキスイハイムでも蓄電池をリフォーム向け商材としても積極的に訴求している。

電気自動車の蓄電池は大容量

3つ目は電気自動車の普及だ。電気自動車の蓄電池は住宅用に比べて大容量であるのに加え、住宅に必要なのはパワーコンディショナーだけとなる。電気自動車には購入時に補助金があるので、住宅と電気自動車を同時に取得するという層にはメリットがありそうだ。

とはいえ、次世代自動車には電気自動車のほか燃料電池自動車などがあり、その主役の位置付けがどうなるか、そうしたことも蓄電池の普及に影響することが考えられる。

また、中大型の容量がある蓄電池は以前に比べ低価格化しているものの、まだ導入には金額的負担が大きいのは事実。さらに、2018年度には設置を後押ししてきた補助金もなくなってしまった(ZEH<ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス>関連の補助事業の一部としては蓄電池も補助金支給対象)。

しかしながら、例えば住宅の地震対策の強化である制震システムや免震システムも万が一のための備えであり、それらと同じようなものと考えるなら、蓄電池は導入に値するのではないか。

そして今後、東南海トラフ地震や首都圏直下型地震などの大規模地震の発生、大型台風や豪雨被害の頻発化により、停電の発生リスクはさらに高まる可能性がある。バックアップ電源としての蓄電池の重要性がさらに高まることも予想される。今後、住宅取得やリフォームを検討される方は導入を検討されてみてはいかがだろうか。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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