警告!次の震災は国民の半数が被災者になる 名古屋の名物教授が訴える大地震への備え

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名古屋大学の福和教授(撮影:関口威人)
「こんなズブズブの土地に本社を建てちゃいけませんね」「家具止めもしないなんて、おバカさんです」――。こうした口調でズバズバと防災の不備を突く、名物教授をご存じだろうか。名古屋大学の福和伸夫教授である。
偽悪的にも思えるその言動は、タテマエと人任せがはびこる「防災大国・日本」に対する憂慮の裏返しだ。人を動かすには、都合が悪くてもホンネを語り、「わがこと」として受け止めてもらわなければならない。
そんな信念を持って走り回る福和教授が、初の単著『次の震災について本当のことを話してみよう。』を出版した。本人から多く取材する機会を持ち、今回の本の編集にも携わった筆者が、その「ホンネ」のメッセージの意味を読み解く。

「防災しない」と容赦なくピシャリ

名大の減災連携研究センター長、日本地震工学会会長、中央防災会議委員……。そんな肩書を頼って、安易に福和教授を講演会などに呼ぶと、主催者は痛い目に遭う。

「こんな危ないところで講演させるなんて、ひどい人たちですね」

講演会はたいてい、こんな「主催者いじり」から始まる。福和教授は講演会場へ早めに着いて、建物の定礎に彫り込んである建築年代をチェック。耐震性が低い1981年以前の旧建築基準法の設計で建てられていないかどうかを確認している。

さらに、基礎周りの地盤沈下やひびをデジカメで撮影。講師の控え室に通され、家具固定されていないロッカーがあったらまたパチリ。ついでに事務室なども撮り、パソコンに取り込んでおく。そして講演が始まると、真っ先にその「具合の悪いところ」をプロジェクターで大写しにするのだ。何も知らなかった主催者は、赤っ恥をかくことになる。

相手が国の防災官庁であろうが、大企業であろうが、容赦ない。ただし居合わせた聴衆には、これが大受けだ。

「人に嫌われる言いにくいことを言う。それをできるだけ茶目っ気たっぷりに。最近は、なかなかそれができにくい社会になっている。私もプレッシャーは多々感じていて、いろいろな人たちから『そんなことを言ってくれるな』としかられることも。そのうち刺されるかなと心配もするが、『言ってくれてありがとう』と感謝されることも多くある。だから私は、元気なうちはちょっと嫌われる『おせっかい役』をできるかぎりやっていこうと思う」――。本書には、こんな過激な「福和節」があふれている。

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