「関空」経営陣、災害対応で露呈した根本問題 民営化後の日仏合弁体制が生んだひずみ

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台風21号が直撃した9月4日夜の関西国際空港の様子。第1ターミナルの駐機場やA滑走路は全面的に冠水。深いところでは40~50センチメートルの深さとなった(写真:共同通信)

9月4日に台風21号が関西国際空港を直撃してから1カ月が経った。高潮による冠水・浸水で大きな被害が出た第1旅客ターミナルやA滑走路などはすでに復旧。空港内は以前の賑わいを取り戻しつつある。10月6日には、台風時のタンカー衝突で一部が損壊した連絡橋でのマイカー通行の規制が解除された。

2017年度、関空の国際線旅客数は前年度比14%増の2190万人となり、初めて2000万人を超えた。9割を占めるアジア圏からの訪日客の増加が牽引し、ここ数年好調が続いている。ただ2週間あまり続いた関空発着便の大規模な欠航は訪日観光など関西経済に大きな影響を及ぼした。災害対策の想定や危機管理体制が適切であったか、運営会社の関西エアポートは今後国と連携して検証を進める方針だ。

関空は台風直撃後丸2日間を無駄にした

関西エアポートは、関空の民営化に伴い国から運営権を取得し、2016年4月に業務を開始。オリックスと、フランスの空港運営会社バンシ・エアポートが4割ずつ、関西圏の主要企業が共同で残りの2割を出資する体制だ。

同社の社内外からは、台風直撃直後から、経営陣の対応や経営体制の適切性に多くの批判が出ている。関空発着便を運航する航空会社のある幹部は、「台風直撃から丸2日間、“空港は再開予定なし”としか発表しなかったのは、空港運営会社の意思決定としてありえない」と突き放す。

さらにこの幹部は、「空港に取り残された利用客らの数も間違っていた(当初は3000人としていたが、実際は8000人だった)。結果、バスなどの手配も不十分で、人を脱出させるだけで手いっぱい。復旧計画の策定にも着手できないまま、最初の48時間を浪費した」と振り返る。

今回関空で高潮による浸水被害が出たのは1期島(第1ターミナルとA滑走路)のみ。2期島にある第2ターミナルを発着するLCC(格安航空会社)のピーチ・アビエーションは、台風直撃翌日の9月5日時点で運航を再開できる体制を整えていた。

複数の関係者によれば、5日に国交省大阪航空局が主催した会議で、ピーチ側が「1便だけでも6日から飛ばしたい」と要望。国交省も「少しでも復旧が進んでいることを示すことは重要」としたが、関西エアポート側は「トイレなどが使える状態ではない」と譲らなかったという。

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