不毛な印パ争いに翻弄されるカシミールの不幸

パキスタンの自爆テロで再び緊迫化

この地域の大部分はインドに支配されていて、一部がパキスタンの支配下にある。そして、小さいながらも粘り強い反政府活動がインドの支配に対して戦いを続けている。宗教がこの分断を一部、あおっている。カシミールは、パキスタンと同様、主にイスラム教を信仰しており、インドは圧倒的にヒンズー教だからだ。

パキスタンの諜報機関は、かつて、カシミールの過激派と密接に連携していて、いくつかの武装集団は、今でもパキスタンから国境を越えて、金、武器、専門技能の提供を受けている、と西側当局者は言う。

「2頭のゾウの戦いの間で苦しむ草」

インド側の生活は、しばしば過激派の攻撃や街頭での抗議、政府の弾圧によって妨害される。兵士はどこにでもいる。道路にも、りんご園にも、巨大なコイル状の有刺鉄線の後ろで銃を持って立っている。学校はしばしば閉鎖される。店も道路も携帯電話のネットワークもだ。若いカシミール人の一部は、自分たちの故郷を「世界で最も美しい監獄」と言う。

外に出たカシミール人は、しばしば差別される。2月中旬にインド人治安部隊を乗せたバスが攻撃された後、インドの大学で何百人ものカシミール人大学生がキャンパスから追い出された。彼らの多くは脅しを受け、その何人かは袋叩きにされた。

インドのさまざまな地方出身者が多く住んでいる首都のニューデリーでさえ、カシミール人の一部は家主から、ある1つの理由で放り出された。カシミール人であるということである。「インドとパキスタンが戦うときはいつでも、真っ先に苦しむのは私たちだ」と負傷した農民カーンのいとこは言う。

カシミール大学政治学教授のアイジャス・アシュラフ・ワニ教授は、カシミールはインドとパキスタンの間の緊張の主たる原因となったと言う。「私たちは、2頭のゾウの間の戦いで苦しむ草だ」。

「しかし」と彼は付け足す。「私たちは、これら2頭のゾウが戦っている最大の理由でもあるのだ」。

(C) 2019 The New York Times News Services 

(執筆:Sameer Yasir記者、Jeffrey Gettleman記者)

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナ後を生き抜く
  • コロナショックの大波紋
  • コロナショック、企業の針路
  • ボクらは「貧困強制社会」を生きている
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
コロナ徹底検証<br>日本は第2波に耐えられるか

米国やブラジルでは新型コロナウイルスの感染拡大が続いていますが、日本は感染者も死者も圧倒的に少ない。その理由はいったいどこにあるのでしょうか。政策面、医療面から「第1波」との戦いを検証。「第2波」への適切な備え方を考えます。