不毛な印パ争いに翻弄されるカシミールの不幸 パキスタンの自爆テロで再び緊迫化

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カシミールで、パキスタン軍によって撃墜されたインド軍のヘリコプター(写真:Danish Ismail/ロイター)

2月22日の朝、カシミールの紛争地域の農民、モハマド・レヤズ・カーンは、自分の羊をチェックしに出かけた。彼が歩いていると、近くで迫撃砲が爆発し、大量の金属片が彼の足を切り裂いた。家族は、大慌てで彼を助けるべく肩に担いで丘の斜面を駆け下りた。彼の下半身は血まみれで、白い骨の一片が突き出ていた。

「私たちの命は兵士らの気分次第だ」と、彼のいとこは言う。「私たちはつねに恐怖を感じながら生きている」。

美しくも呪われたヒマラヤの谷、カシミール

インドとパキスタンの間の数十年来の確執のせいで、ある地域がずっと苦しみ続けている。両国が権利を主張している、美しくも呪われたヒマラヤの谷、カシミールである。

同様の事件は、両国の関係が緊迫化する中、先週、再び起こった。戦闘機が鋭い音を立てて空を行き、何千もの兵士がカシミールに動員され、2国に非常事態をもたらした。

確かに境界での砲撃や、カーンのように被害にあった人もいたが、それでも22日の攻撃はまだ穏やかなほうだった。パキスタンは、撃墜して捕らえたインド空軍のパイロットを、カシミールのパキスタンが支配する地域で解放した。

パキスタンのイムラン・カーン首相は、パイロットの釈放を善意の証しだと言い、アメリカや中国、ロシア、そのほか多くの国々がインドとパキスタンに危機を緩和するよう要請する中、インドは――いくぶん、屈辱を感じているようだが――停戦する気があるようだ。

パキスタンの当局者が、インド人パイロットを何百人もの人々が待ち受ける北西インドとのワーガ境界へ連れていった。ワーガは、多数のインド国旗がはためく場所にあり、多くの人々が愛国的な衣服を着ていた。ある男性の野球帽には大きなブロック体で「I LOVE MY INDIA(私は私のインドを愛している)」と書かれていた。

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