不毛な印パ争いに翻弄されるカシミールの不幸 パキスタンの自爆テロで再び緊迫化

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最近、何人かのインド人が取材に応じ、最初の爆撃は成功で、インド軍は何百人もの危険なテロリストを打ち破ったという政府の主張を信じている、と語った。だが、これまでのところインドはその証拠を何も出していない。

それどころか、爆弾が落ちたパキスタンの田園地域からの報道は、インドの主張に疑問を投げかける。目撃者は、爆弾はほとんどが無人の森に落ち、負傷したのは目の上に小さな切り傷を負った62歳の村人1人だけだったと語っている。ロイター通信によると、彼は「ここにどんなテロリストがいるっていうんだい?」と尋ねたという。

対立が始まる理由はいつも「相手が始めた」

カシミールでは、人々は何を信じていいかわからない。

毎晩、実効支配線として知られる紛争国境沿いに住む人々は、小さな洞窟のような掩蔽壕に詰め込まれて、冬の厳しい寒さと非常に現実的な可能性である突然の死に気が遠くなっている。

朝になると彼らは、夜の間に定期的に発砲される機関銃と大砲による破壊の程度を測るために洞窟から這い出す。今回の危機の前でさえ、パキスタン軍とインド軍は、実効支配線を越えてコンスタントに砲撃し合っていた。何万人もの軍隊が投入され、相対している。ほぼいつも言われる理由は「相手が始めた」である。

大砲や迫撃砲が兵士を越えていき、村に着弾して、民間人に重傷を負わせたり、殺害したりすることが多くある。

それでもなお、何世紀もの間、カシミールはその美しさで知られてきた。高く白いヒマラヤの頂の間に広がるカシミールには、夏には草地にじゅうたんを敷き詰めたように野花が咲く。冬は、スキーをするのに最適である。

しかし、カシミールは同時に、経済的発展をしていないがゆえにいい仕事がない、閉塞感のある不景気な土地でもある。人々が独立を求めていらだち初めて以来、ずっと低迷したままである。

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