――学会発表のときに受けた質問がBifiXの発見につながったと伺いました。ひらめきを与えた質問とはどういったものだったんですか?
学会は運命的でした。学会発表をした際、次の人が急きょ発表を取り消したので、時間が余っていたんです。なので、司会の方が「ほかにもないですか」と会場で質問を投げかけたんですね。そうしたら「摂取したビフィズス菌より、出たほうが多いですが、腸内で増えたってことですか?」という、普段出ない、わりと単純な質問が出まして。
その場では「増えています」とだけ答えたのですが、ずっともやっとしていて。腸内でビフィズス菌が増えるということは、なんか価値があることなのかもしれないと考え始めました。「生きて腸まで届く」っていうのはいろんな会社が言っていましたが、どんな状態で届いているかも大事なんじゃないかと。
――そして、腸内で「もっと増える」ビフィズス菌を探したんですね。
最終的に使うことになったBifiXは、酸素にすごく強かったので、僕は乳酸菌に分類していました。よく調べたらビフィズス菌だったので、乳酸菌研究からもはずしていた菌でした。強いビフィズス菌を探すことになり、ちょっと待てよと、そういえば乳酸菌と張り合うくらい強いビフィズス菌がいたよなと思って、もう1回出してきて調べてみたら、めちゃくちゃ強かった。普通のビフィズス菌は牛乳に入れておいても牛乳は固まりませんが、BifiXはちゃんとヨーグルトになるんです。これ以上の菌を探すのは大変そうだなと思います。
自身の希望で基礎研究からマーケティング部へ異動
――BifiX発見後、マーケティングを担当されるそうですが、これは自分で希望したのですか?
自分で希望しました。研究している当時から、この研究成果を世に広めたいと思っていたんです。上司に相談したところ、いきなりマーケティングはむずかしいからと、中身づくりの部署に行くことになりました。大学院に通って経営の勉強もしました。その2年後に社内公募でマーケティング部に異動しました。
――基礎研究と比べて、マーケティングはいかがですか?
マーケティングのほうがきついです。シャーレの中の菌のほうが、素直でいいなって思います。人間相手の商売のほうが複雑で、思ったとおりになってくれません。あと、マーケティングは、物の見方が全然違います。菌を見たときに、研究者は菌の物理特性を見ますが、マーケティングの人は(商品を)どう魅力的にみせようかとか、そこから感じられる情緒的なことを見るんです。
――トクホや機能性食品は「これさえ食べればいい」という広告が目立っているイメージがあります。BifiXのブランドサイトを見ると「食物繊維をとる」「運動する」「ヨーグルトを食べる」ときちんと説明しているなと感じました。
実はいまヨーグルトは、ずっと成長してきた市場が前年割れを続けています。それはこの菌がいいとか、これを飲んだらこうなるとか、効能効果を過剰にあおりすぎて、お客さんの信頼を失っているためではと思うんです。
お客さんがいいのか悪いのかを客観的に確認できる術を用意して、ちゃんとわかるようにすることが必要です。僕がやっていることは、自分が基礎研究して学んだ知識を世の中にわかりやすく価値ある情報として提供することだと思っています。これが僕は、オタクが世の中に貢献できるひとつのあり方ではないかなと。
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