グリコ社員がヨーグルトに注いだ熱すぎる情熱 好きを仕事にする「菌オタク」キャリアと日常

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――ということは、検査結果から、被験者の食生活がわかるということですか?

江崎グリコは結構社員数がいるので、相手を知らないことが多いのですが、結果を見ているとなんとなく見えます。検査結果から「あなた食生活こうじゃないですか?」って聞くと、「思い当たる節があります」って返ってくることがあるんです。

食物繊維やオリゴ糖を多く含んだものを食べていると、腸内の多様性が維持されます。ある社員はすごく多様性が豊富で、長寿菌と呼ばれる菌が多くいたんです。その話をしたら、家が田舎の農家だったので子どもの頃から母に野菜ばっかり食べさせられたと。当時は嫌いだったけど、母のおかげかもしれませんねと返事をくれました。こういってもらえるとうれしいですね。

――検査の結果、腸が実年齢より加齢していた場合、何かできることはあるんですか?

検査結果から、最終的にはどうしたらいいかという話になるので、あなたはこういうビフィズス菌が多いから、多分、こういう食べ物が合っているとアドバイスをします。

グリコのBifiXヨーグルト。加糖タイプやプレーン・脂肪ゼロタイプのほか、果実やアロエ入りのタイプも発売している(撮影:尾形文繁)

グリコで販売しているBifiXヨーグルトも使います。検査の前にどれくらいBifiXを食べていたかを聞くと、腸内でBifiXというビフィズス菌がどれだけ増えたか計算できます。よく増えていれば、BifiXに合っている可能性が高いので、引き続き食べ続けてくださいとアドバイスします。相性が悪い場合は、ほかにも何か足したほうがいいだろうと考えます。例えばこういう食物繊維があるので、これも食べてみたらどうですかと教えてあげます。

菌研究の必要性を訴えて基礎研究部門を新設

――グリコに入社したのち、菌研究の必要性を上司に直談判して、研究部門を新設させたそうですね。

1999年に当時のグリコ乳業(現在は江崎グリコに吸収合併)に入社し、2年目の途中くらいから理化学研究所に派遣されました。理化学研究所で1年半ほど、腸内フローラ、乳酸菌やビフィズス菌がいかに人にとって有益なのかを教えられました。当時のグリコは「朝食りんごヨーグルト」が好調で、ヨーグルトの研究というとおいしさの追求でした。けれども世の中は、菌の研究に関心が向かっていました。なので、(グリコに)帰ってきてから、菌の研究をするべきだと提案しました。

――苦労もあったと思いますが、無事、社長の決裁が下りて、そこから乳酸菌の研究を始めたんですね。

当時の人事部長が、予算と人も割り振ってくれました。日本の法律では乳酸菌が入っていないとヨーグルトと名乗れないので、まずは乳酸菌の研究を始めました。いろいろな場所に行って菌を集めてきました。

例えばグリコの工場に毎日、生乳が送られてくるので、そこから菌を取る。牧場に行って、牛の鼻先や乳首から取る。どこかのお宅でぬかみそや漬物を作っていると聞くと、その汁をもらってきたりしていました。

――5~6年かけて1万株を集めたのに、研究対象を乳酸菌からビフィズス菌に切り替えたそうで。ビフィズス菌は何が違うんですか?

体にどんな影響を与えられるのかとか、本当に体のことを考えるならビフィズス菌なんじゃないかと、勉強しているうちにふつふつとわいてきました。

ビフィズス菌は工業的に扱いにくいんです。乳酸菌は牛乳に入れて温めておけば発酵しますが、ビフィズス菌は酸素があると発酵しません。また、ビフィズス菌は乳酸だけじゃなくて、酢酸が出てくるので、ちょっと風味が独特です。そういうのがうまくコントロールできないと商品化しにくいんです。

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