アカデミー賞「グリーンブック」差別描写の真意

ファレリー監督「説教臭いのは流儀じゃない」

――評論家の態度は変わった?

自分の評価がこんなに低いなんて知らなかった(笑)。お笑いは評論家から尊敬されないものだけど、別に褒められたくてこの世界に入ったわけじゃない。僕らの『メリーに首ったけ』は、アメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI)の「アメリカ喜劇映画ベスト100」に選ばれている。なのに評論家は、僕が初めて映画を撮ったみたいに褒めるんだ。

――主演俳優を選んだ経緯は?

ジョン・ファブローの名前も挙がった。リップみたいにたくましくて、いい俳優だからね。でも『はじまりへの旅』を見て、モーテンセンがいいと思った。出てくれるわけがないとみんなが笑ったが、彼に手紙を書いた。ビゴ様、3ページだけでいいので脚本を読んでください。気に入らなければ諦めます、と。

2日後、やりたいが自信がないと返事が来た。だから「あなたは『イースタン・プロミシス』に出たんですよ。あれに比べればチョロいもんです」と返した。シャーリー役は、悩むまでもなくアリだった。

――白人監督が差別を題材にすれば、当然厳しい目で見られる。

そこは意識した。白人が一方的に黒人を救う話も、黒人が一方的に白人を救う話も手あかが付いてる。そんな型にはまらないようにした。リップはシャーリーを俗世の災難から救い、シャーリーはリップの魂を救う。

現実のひどさを伝え切れていないとの批判は覚悟しているが、説教くさいのは僕の流儀じゃない。さまざまな信条や背景の人に、家族で見てもらえる映画にしたかった。それに映画の冒頭、リップは黒人が使ったコップをゴミ箱に捨てる。差別の描写が手ぬるいなんて言わせない。

――リップの息子が共同脚本だが、シャーリーの子孫は?

消息が分かったのは映画が完成してからだった。でも関係者の試写会には来てもらえたよ。これはあくまでもリップの視点からの物語で、全て真実だと言うつもりはない。でも、シャーリーが司法長官のロバート・F・ケネディに電話で助けを求めたのもカーネギーホールに住んでいたのも、フライドチキンをめぐる2人のやりとりも本当のこと。シャーリーが旅を回想した音声テープも参考にした。

――『Mr.ダマー』と『グリーンブック』には男同士のロードムービーという共通点がある。

どんな物書きにも決まったテーマがある。ジョン・アービングの小説にはどれも熊かレスリングが出てくる。僕は車の旅が大好きで、22回もアメリカを横断している。人生に迷うと、必ず車の旅に出るんだ。

(本誌2019年02月26日号掲載)

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