トヨタ「スープラ」直6エンジンで復活した意味 業界内では直列6気筒エンジンに復権の動き

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直列6気筒エンジンの価値は、原動機として究極を表現できるところにある。メルセデス・ベンツにより新たな直列6気筒エンジンの姿が提示されたあと、スープラやBMWのZ4に直列6気筒エンジンが搭載されることは、両車が究極を目指したスポーツカーである証しといえるだろう。1990年代以降強く求められた衝突安全との両立を可能にする最新の技術が投入されていると想像される。

まだ試乗の機会はないが、豊田章男社長が熱弁をふるったように、直列6気筒エンジンを搭載した新型スープラが天にも昇る上質な加速をもたらすであろうことは想像できる。そして、スープラの復活を単にスポーツカーの充実にとどめるのではなく、最上の乗り味を与えることにトヨタはこだわり、BMWとの共同開発を決意したのだろう。

水平対向4気筒エンジンを搭載したトヨタ86とスバルBRZのうえに、最上のスポーツカーとしての新型スープラがあっていい。走行性能だけでなく、高性能を上質に味わう運転の機会が与えられるのである。

共同開発によるメリット

このことはまた、BMWにとっても、長年にわたり直列6気筒エンジンにこだわりを持ってきた自動車メーカーとして、よい機会になったのではないだろうか。共同開発をすることにより、開発の手間や原価をトヨタと分け合うことができる。

そのことを揶揄する声もなくはない。しかし、トヨタはすでにスバルとの間で86/BRZの経験を持っているが、その2台はスープラとZ4以上に外観を含め共通性が高かった。だが、運転してみればまったく乗り味は異なり、トヨタとスバルの愛好家をそれぞれ満足させるものであった。

またマツダは、ロードスターのフルモデルチェンジに際して、フィアットとアバルト124の誕生で協力し合っている。この2台は、外観はもちろんのこと、搭載するエンジンも異なるという特徴をもたせることで、それぞれのブランドの独自性を表現した。

以上の例は、もし、それぞれの自動車メーカーが独自開発しようとすれば誕生しえなかったかもしれない。協力することで、消費者に喜びと選択肢をもたらした。

まもなく、スープラとZ4を試乗できる機会が訪れるだろう。どのような持ち味を発揮するのか、また直列6気筒エンジンはどのような運転の歓びをもたらしてくれるのか、楽しみな春の訪れとなりそうだ。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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