トヨタ「スープラ」直6エンジンで復活した意味 業界内では直列6気筒エンジンに復権の動き

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同じ6気筒でも、直列6気筒とV型6気筒では、振動の要件が異なる。V型6気筒は直列3気筒エンジンをV型に並び替えたのと同じであり、直列3気筒エンジン特有の振動が残るのである。

したがって、同じ6気筒とはいえ、直列6気筒エンジンに憧れてきた人たちにとって、V型6気筒エンジンはもはや憧れる存在ではなかった。それなら、V型8気筒エンジンのたくましい振動のほうがましというものだ。というのも、V型8気筒はいうまでもなく直列4気筒をV型に並べたものであり、直列4気筒エンジンは独特の振動を伴いながらも、刺激的な加速をもたらすエンジン形式であるからだ。

以来、直列6気筒エンジンはV型12気筒エンジン含め、世の中からほとんど消えたと言っていい。わずかに、BMWが特別なスポーツ車種や、ハイブリッドシステムに直列6気筒エンジンを残す程度となった。

ベンツS450に直6エンジン搭載

しかしここにきて、直列6気筒エンジン復権の動きが起きた。昨年発売されたメルセデス・ベンツS450に、直列6気筒エンジンとISG(モーター機能付き発電機)を組み合わせて新開発し、搭載してきたのである。

このエンジンは、徹底的な寸法の縮小と、通常エンジンの前側にあるベルト駆動による補器の可動部分を電動化によりなくすことによって、エンジン全長を短くした。ボンネットフードを開けてエンジンを見ると、とても直列6気筒とは思えない短さだ。

S450の乗り味は、まさに直列6気筒エンジンの滑らかを存分に発揮し、洗練された加速をもたらす。なおかつ、ISGと電動スーパーチャージャー、さらには排気によるターボチャージャーの組み合わせにより、発進の低回転域から力強く速度を上げていく。その感触は、あたかもモーターのようだ。

メルセデス・ベンツは、電動化の時代を前にモーターへの橋渡しとして直列6気筒エンジンを復権させたのだと私は考えた。エンジンの中で最も上質で滑らかな加速をもたらすのが直列6気筒エンジンであり、それはモーター時代への架け橋になる。実際、S450はエンジンで走っていながら、エンジンであることをあまり意識させない。よほどアクセルペダルを深く踏み込まなければ、モーターで走っていると言われてもおかしくないほどだ。

究極のエンジンとして憧れられてきた直列6気筒エンジンやV型12気筒エンジンが求めてきたものは、まさにモーターらしい滑らかさと静粛性だといえる。かつて、V型12気筒エンジンを搭載したジャガーXJは、走ってきてもほとんど排気音を気づかせないほどであった。

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