猫の楽園「青島」の想像よりはるかに厳しい現実 たくさん生まれてもバタバタと死んでいく

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そう考えたSさんは4年かけて粘り強く島民を説得し、大洲市に働きかけ、県内外に協力を呼びかけ続けた。そしてようやく昨年、大洲市は青島の猫問題のために予算を計上したのである。そして動物愛護団体「公益財団法人どうぶつ基金」と協力し、市のプロジェクトとして猫たちの一斉手術を行うことになったのだ。

春に生まれた子猫(撮影/瀬戸内みなみ) 

「新しく生まれなければ、猫は必ず減っていきます。すぐにゼロにはなりませんが、数が限られてくれば、その後のことも考えられるようになる。キャットフードや寄付などはこれまでも島外のひとたちの善意に支えられてきましたが、手術が済めばもっとお願いしやすくなりますし、万が一のときには、みんなで手分けをして猫たちを島から出すこともできるでしょう。でも100頭もいたら、それはとても無理ですから」

予想以上に繁殖してしまった猫たち

一斉手術は昨年10月に実施された。その当日島に上陸したのは、青島の猫問題解決のために奔走してきた大洲市市議会議員の弓逹(ゆだて)秀樹さんと市役所職員数名、獣医師3名、獣医師を派遣した公益財団法人どうぶつ基金のスタッフ。それからSさんをはじめとする、十数人のボランティアたちだ。

手術のための猫の捕獲が始まる。作業するボランティアはふだんから保護活動をしているひとが多いから、猫の扱いには慣れている。連携して手際よくことが進んでいく……と、悲鳴が上がったのはこのときだ。

「ケージが足りない。200匹以上いる!」

Sさんは島民のKさんといっしょに猫の数について事前に確認し、全体で160頭くらいだろうと計算していたという。だが結局は、毎日猫に餌をやり、猫のことを気にかけているひとでさえも把握できないほどの状況になっていたということだ。

捕獲した猫を入れておくケージは急遽、島外の支援者に要請して数を増やし、作業を続行。翌日から獣医師による手術が始まった。予定では予備日を入れて3日間で完了させることになっていたが、開始後まもなく、台風の接近で翌日午後の船が欠航するかもしれないという情報が入ってきた。青島には旅館や商店どころか、自動販売機さえもないのだ。住民以外の参加者は全員、毎日対岸から通うことになっていたから、船が出ないということになれば猫たちの手術が中途半端に終わってしまう。ということは……。

「今夜は手術会場に泊まり込み! 徹夜してでも完了させます!」

その日の深夜、ようやく最後の1匹が終了した。それから関係者は全員着の身着のまま、1枚ずつ支給された災害時用の備蓄毛布にくるまって床に雑魚寝したのだった。

次ページ最終的には210頭が捕獲され…
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