猫の楽園「青島」の想像よりはるかに厳しい現実 たくさん生まれてもバタバタと死んでいく

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船がなくなるとき。それはつまり島からひとがいなくなり、無人島になるとき、ということだ。この懸念は決して大げさなものではない。

青島の人気が急激に高まった数年前には、島の人口は15人、そして猫は100匹以上といわれていた。だが入院や死去などで住民はどんどん減っていき、現在では3世帯6人にまでなっている。

定期連絡線のそばで(撮影/瀬戸内みなみ) 

言うまでもないことだが猫(一般に飼われているイエネコ)は野生動物ではなく、家畜である。ひとの住んでいないところに猫はいないし、たくさんいる地域でも、住民が減れば猫の数もだいたい減るものだ。ところが青島では違った。昨年10月、衝撃的な事実が発覚したのだ。なんと猫の数が200頭以上にまで増えていたのである。

愛媛県内で猫の保護活動をしているSさんは、以前から青島の状況に危機感を覚えていた。島民の平均年齢は70歳を超え、島で中心となって猫たちの面倒を見ているKさん夫妻も、負担の大きさと体力の不安を感じ始めている。もしもいつか本当に無人島になってしまったら、猫たちはいったいどうなってしまうのか。

「みんなで山のなかに入って小鳥やネズミを捕って暮らす、なんてことはあり得ません。ひとが食べものをやるから猫は生きていけるし、だからあんなに増えたんです」

とSさんはいう。

全頭一斉の不妊・去勢手術

もし島からひとがいなくなっても、猫たちは誰かがやって来て、食べものをくれるのを待ち続けるだろう。これまでずっとそうしてきたのだ。そして年をとった猫、幼い猫、病気の猫と順々に、飢えて倒れ、死んでいくのだろう。しかし、そんな光景を見たい人間が、いったいこの世の中にいるだろうか?

しかも今や、青島は猫の島として世界中から注目を集めているのだ。

ほんの周囲4キロメートルの島のなかで、人間が暮らしていける平地は海沿いのわずかな場所しかない。そこに猫たちも密集して暮らしている。海に隔てられているから周辺地域との交流はなく、当然猫たちの間では近親交配が進むことになる。これによる健康上の問題も顕著になっていた。子猫たちのなかにはひょろひょろとして手足がか細く、目に異常のあるものも少なくない。たくさん生まれてもバタバタと死んでいくのだという。それでも猫たちは交尾し、子どもを産む。

だからまずは、猫がこれ以上繁殖して増えないよう、不妊・去勢手術をしなくてはいけない。それも全頭、一斉にだ。一対でもつがいが残れば、驚くほど繁殖力の強い猫はそこからまたあっという間に数を増やしてしまう。

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