トランプ派知識人が展開する「陰謀論」の中身 「国家内国家」が存在するという論壇も

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トランプ派の保守系オンライン雑誌『アメリカン・シンカー』が、「弾劾はトランプ大統領にとってむしろ有利」と論じた理由とは
日本人にはあまり知られていないトランプ派メディアが何を報じているのかを追跡する本連載。今回は、インテリ系の保守メディアがトランプ大統領の弾劾問題をどのように報じているのかに迫る。

『アトランティック』トランプ弾劾の特集記事

地政学リスクを分析するコンサルタント会社ユーラシア・グループは、年初に毎年恒例の「世界の10大リスク」を発表し、その1つにアメリカ国内政治の混迷を挙げた。

おととしはドナルド・トランプ政権の独断外交がリスクとされたが、今年は内政の混乱による世界的影響に警戒が高まっている。先の中間選挙で民主党が連邦議会下院を奪還したことによる対立激化に起因するリスクだが、中でも、ロシア疑惑などをめぐって下院が大統領弾劾手続きに入れば、アメリカ内政は一挙に混迷の度を増す。

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2016年大統領選でトランプ陣営がロシアと共謀したとするロシア疑惑は、ロバート・モラー特別検察官の捜査が近く終了し、報告書が司法長官に提出される見込みだ。ナンシー・ペロシ下院議長は弾劾手続き開始に慎重だが、それも報告書の内容次第だ。

こうした情勢の中で、伝統ある有力総合月刊誌『アトランティック』の3月号は、「トランプを弾劾せよ」という特集記事を掲載、「民主党が多数派議席を占めた下院はもはや憲法上の義務を逃れることはできない」と主張した。記事は同誌の「思潮」欄担当が執筆した。

同時に、同誌編集長ジェフリー・ゴールドバーグが「編集長ノート」で、同誌は二大政党間で中立を保つことを伝統としてきたが、1860年大統領選であえてリンカーン支持を表明するなど幾度か、立場を鮮明にした例があり、それらに倣って大統領弾劾を求める記事を掲載すると、弁明した。

同誌の主張は、タイトルほど過激なものではない。突き詰めて言えば、弾劾は、大統領がその職責を果たすのに相応しくないかどうかを決める政治プロセスであり、トランプ大統領のケースは、1865年のリンカーン暗殺後に副大統領から昇任したが弾劾訴追されたアンドリュー・ジョンソン大統領の場合に似ていると見る。ジョンソンの政策は奴隷解放など南北戦争のせっかくの成果を損なってアメリカの政治を混乱させた。それを収めたのが弾劾手続きだったという。

『アトランティック』は、トランプが引き起こしている「憲政の混乱」で、世論や政治は蜂の巣を突いたようになっているが、弾劾手続きに入ることで、その混乱を議会の中に封じ込めることができると論じる。

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