――具体的に、どのように成熟産業から成長産業に人材を移行させるのでしょうか? 北欧では、成長産業はこれと定めて、そこに対応するスキルを公的な研修やトレーニングを実施していますが。
まさにそれです。新しい分野で働くには新しいスキルが必要ですから、日本でも厚労省中心に、人材の学び直し、能力開発を公的に支援する流れです。われわれ経産省も、出産などで一度退職した人のブランクを埋めるべく、社会人のインターンシップを推進しています。
――「ママ・インターン」ですか。それはいいですね。
ママだけに限りませんが、主婦を主なターゲットにした「新戦力活用プロジェクト」という事業です。キャリアに一度ブランクがあると、再び正社員になるのは、働く側も使用者側も不安ですが、それを埋めるため、実習でトレーニングする際に助成金を出す仕組みです。政策としては、最終的には、正社員雇用を目指しています。
今のキャリア女性モデルは、つらすぎる?
――ところで、いいか悪いかは別にして、かつてノルウェーが役員の女性比率を4割にしない企業は上場廃止にするよとペナルティを課したように、日本でもクオーター制を政策として検討しているのでしょうか?
クォーター制については、いろいろな意見があるところです。現状は、ささやかなレベルではあるものの、安倍政権は経団連をはじめとする経済三団体に、上場企業でまず女性役員を1人は擁立してくださいと要請しました。その結果、実際、昨年度に比べて、今年度の日本の女性役員の増加数は、統計的にもピッと上向いています。
――ただ、現状、日本には上に上がりたくない、出世したくないという女性も多いいですよね。
一般的にそう言われていますね。ただそれは、今のキャリアアップのモデルがつらすぎるからだと思うのです。ですから、女性の管理職や役員の数を増やすには、もっと現実的で自然体な“両立モデル”が出てこないといけない。
――そういう意味では、本連載「ワーキングマザー・サバイバル」には、仕事も育児も美しくしなやかに両立する、すごすぎる女性ばかり登場するので、学生さんの中には「私には無理」と引いちゃう人もいるのかもしれません。
本当は、早く管理職になったほうが、自分の時間を自分で管理できるので、両立しやすい一面もあるのですけどね。
――ええ。取材させていただいた方の中には「早く、偉くなったほうが両立が楽」と明言される方も、いらっしゃいました。
ワーキングマザーはみんな、あえて「大変」「大変」って言っているのかもしれませんよね。よく言われるのが、ワーキングマザーって、時にやっかみの対象になるでしょう。だから、自己防衛のために、大変、大変言い過ぎる、と。それを、後輩の女性が真に受けてしまうのかもしれませんね。
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