日本人が知らない「シリア難民」の不条理な現実 気づきを与えてくれる「ZENOBIA」のスゴさ

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

【あらすじ】

小さな村の少女アミナのもとにもシリア内戦の影は刻々と近づきつつあった。

戦火を逃れるためアミナはボートで国を脱出しようと試みるが、荒波に襲われ船は転覆してしまう。

『ZENOBIA』の表紙絵(イラスト:『ZENOBIA』より)

暗く深い海の中、アミナは村での出来事を思い出す――お母さんとかくれんぼで遊んだこと、ドルマというぶどうの葉っぱでつくる料理を一緒に作ったこと。おじさんと船に乗り込むまでの旅路。そしてシリアの女王ゼノビアのこと。

強い意思をもつゼノビアは当時の帝国ローマにも屈しなかった。アミナがくじけそうになったとき、お母さんは よく「ゼノビア のように強くなりなさい」と元気付けてくれたのだ。

子どもの目線で描かれた不条理な現実。

繊細なイラストと言葉で紡がれたこの本のメッセージは、国境を超え、あらゆる世代の心に 戦争の意味を投げかけています。

「サウザンブックス」の翻訳出版プロジェクト『ZENOBIA』より)

文:Morten Dürr(モーテン・デュアー)
1968年生まれ。これまでに数々の賞を受賞し、56冊の著書は18カ国で出版されている。またデンマークの文化省より優秀な作家にのみ付与される助成金を獲得。コペンハーゲン大学で 映画とメディアを勉強した後、ロンドン大学 大学院でラジオとメディアを学ぶ。現在2人の娘とともにコペンハーゲンに在住。
絵:Lars Horneman(ラース・ホーネマン)
1966年、デンマーク生まれ。これまでに100冊以上の本のイラストを手がけ、本作品ゼノビアでは、デンマーク文化省からイラストレータープライズを受賞。

「知るきっかけ」を与えてくれた

荒木さんが『ZENOBIA』の中で印象に残ったのは、紛争が始まる前にアミナがお母さんとかくれんぼをするシーンでした。

「シリアは悲惨な部分やショッキングな部分だけが映像で取り沙汰されている国ではあると思うのですが、平和だった時期は普通の家庭と同じようなシーンがあって、普通の親子の絆があって、幸せな空間があって。そういうことをすごく穏やかに伝えてくれている。どの家庭にも、どの子どもにも、こういった世界があって然るべきだということを、短い言葉と絵で伝えてくれる、すごくいいシーンだなと思っています。

自分の子どもに置き換えたときに『ちょっと考えられないな』と、ふと気づくシーンだと思うんですよね。シリアの話をしていますが、自分たちに立ち返って、いろんな気付きを教えてくれる本です」

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事