日本人が知らない「シリア難民」の不条理な現実 気づきを与えてくれる「ZENOBIA」のスゴさ

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もともとシリアに関して強い関心があったわけではないという荒木さん。『ZENOBIA』は「知るきっかけ」を与えてくれたと話します。

「(『ZENOBIA』と出会ってから)いろんな方と知り合い、以前よりもシリアについて知れるようになり、この知識を基にまた何か新しいことを学んでいくきっかけになりました」

考えてほしい、感じてほしい

 「いい本だな。日本でも紹介したい。私と同じ経験をしてほしい」と思った荒木さんでしたが、日本で翻訳出版するのは容易ではありませんでした。

イラストはリアリティのある描写と落ち着いた色使いで読みやすい(イラスト:『ZENOBIA』より)

「馴染みのない国の話ですし、カラーなので印刷するにもお金がかかる。ベストセラーになりうるかというと、多分そうではない。そういった本って、この昨今の出版の状況とかを考えると配給するのが難しい。すごくいい本なんだけど、ビジネス的に難しいから日本に入ってこない本って、この本に限らずいっぱいあるんです。それがすごくもったいないなと。世界で何カ国語にも翻訳されていろんな子どもたちの手に渡っているのに、日本に来ないというのはすごくもったいないなと思ったのが、クラウドファンディングを始めた動機です」。

荒木さんは、クラウドファンディングを成功させ、日本の多くの子どもたちの手元に『ZENOBIA』が届くことを願っています。

クラウドファンディング発起人・荒木美弥子さん(写真:GARDEN Journalism)

「これは『今は何年何月で、どこの話です』という話ではないんですよね。想像力がすごく膨らむ本。自分の考えを膨らまし、その考えを誰かと意見交換していくとか、お母さんとお話するとか、そういうきっかけのための本。何を伝えたいかじゃなくて、考えてほしい、感じてほしいというための本だと思います。

小さいお子さんと一緒に読むときにそこまでの話にならなくても、もっと先になって『ああいう本、読んだっけなー』とか『もう1回読んでみようかな』とか、そういった気持ちになってもらえるといいなと思います。小・中学生になってから繰り返し読むと、また新しい発見や、新しい考え、気付きが出てくると思うので。そこが本のすばらしさだと思うし、本の力だと思います」

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