「1本25万円」の生ハム店に予約が絶えない理由

居酒屋からの決死の転換で新境地に

しかし経営を引き継いだもののうまくいかず、売り上げはジリ貧に。そこで「最高級イベリコ豚の価値が本当にわかるお客様にターゲットを絞ろう」と考えたという。

「ターゲットを絞る」というと、いかにもよくある話に聞こえるかもしれない。実際には山本さんは、売り上げがさらにガクンと下がる恐怖を感じていたそうだ。しかしそれまでいろいろとやっても、うまくいかなかった。「わらにもすがる思いでターゲットを絞らざるをえなかった」のが現実だったという。

優越感に浸りたい52歳経営者をターゲットに

ではターゲットをどのように絞るか。そのモデルは、当時応援してくれていたお客さんの中にいた。「52歳の経営者。優越感に浸りたい、人に自慢したい、モテたいと思っている人」だ。そこで「この人が喜んでくれることを、具体的にやろう」と考えた。

最初は試行錯誤の連続だった。まず接客の際にレアル・ベジョータの説明をする。メニューカバーを高級感あるものに作り変える。食器も入れ替える。さらにレアル・ベジョータのストーリーを描いたランチョンマットも用意した。

一方でそれまで行っていたクーポンを廃止したので、最初の1年は売り上げが低迷した。しかし徐々に単価はアップ、1年が過ぎる頃には予約で満席の日が続くようになった。

山本さんはこのタイミングで店舗改装に踏み切った。生ハムを丸々1本25万円でキープできる生ハムセラーや、隠れ家風の個室を作った。さらにキープした生ハムには、キープしている人の名前を書いた大きな木のプレートを付けて、知り合いと一緒にいる個室のテーブルまで持ってきて目の前でスライスする、というパフォーマンスも加えた。

これらが人気になり、さらにVIPルームも作った。銀行の金庫をイメージして、入口は店とはまったく別のところから入れるようにした。看板もなく、暗証番号で入室する。私も実際に店に行ってみたが、外から見ても何の店かまったくわからなかったし、隠し扉があったりして、遊び心満載だ。

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