イタリアとフランスの大げんかの理由と行方 「大使召還」、世界大戦後で前例のない事態に

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金融市場から見て懸念すべき展開は、こうした対立が結果的にポピュリスト勢力を利することになり、欧州議会選挙で反EU会派が躍進、債券市場を中心に混乱の度を深めるという懸念だろう。

実際、先週後半にかけてイタリア債利回りが2.73%から2.95%に跳ねたのは、フランスとの軋轢を嫌気したものと考えられる。現時点ではイタリア一国にとどまっているが、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和(QE)を停止している状況下、外的なショックにユーロ債市場全般が脆弱になっているという事実は忘れるべきではない。

欧州議会選挙へ向けてますます激化のおそれ

また、為替市場の観点からは、FRB(米国連邦準備制度理事会)がはっきりとハト派姿勢を強めてきたにもかかわらずドル相場がいっこうに下がってこない背景として、ユーロ圏の政治・経済情勢に「まったく良い所が見当たらない」という現状があると思われる。為替はつねに「相手がある話」であり、このままでは敵失でドル相場の堅調が維持される状況が続きかねない。現状は政治面では言うに及ばず、経済面でもイタリアがリセッション入りし、ドイツもこれを辛うじて回避する程度と頼りない。

イタリアの現政権では数少ない良識派と目され、それゆえに苦労しているコンテ首相は両国間の対立が「直ちに解消されることを期待する」と述べているが、同首相が副首相2名に挟まれてレームダック化していることも周知の事実だ。欧州議会選挙が近づくに連れて両国の対立がますます激化するおそれはやはり否めない。ブレグジットに目を奪われがちだが、EU内部の「仲間割れ」からも目が離せない。

※本記事は個人的見解であり、所属組織とは無関係です

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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