英国は「合意なき離脱」が避けられないのか 英国下院は「合意」を歴史的大差で否決

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メイ首相はEUとの離脱合意の受け入れを問う採決で歴史的大敗を喫した(写真:REUTERS/Peter Nicholls)

15日夜(日本時間の16日未明)に英国メイ政権と欧州連合(EU)の間で合意されたEU離脱案の受け入れ是非を問う採決が、英国下院で行われ、賛成202・反対432の大差で否決された。230票差で政府提案が否決されたのは、1924年のマクドナルド内閣の166票差を上回り、近代英国政治史に残る大敗だ。保守党議員の118名(賛成票は196名)、閣外協力する北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)の全10名が反対票を投じ、野党勢で賛成票を投じたのは労働党の3名と独立系議員の3名にとどまった。

最大野党・労働党のコービン党首は投票否決直後に内閣不信任案を提出、16日夜(日本時間の17日未明)に投票が行われた。昨年12月にメイ首相に対する保守党の党首不信任手続きを主導した党内強硬離脱派・欧州調査グループ(ERG)のメンバーや閣外協力するDUPが、労働党の内閣不信任案に同調せず、325対306で不信任案は否決された。

3カ月間の離脱期限延長が1つの選択肢

議会の合意受け入れ拒否を受け、政府は3議会営業日以内(21日まで)に新たな行動計画を議会に提出する必要があり(当初21日以内だったが修正動議で3議会営業日以内に短縮された)、メイ首相は今週中にもさらなる譲歩を求めてEU高官との会談に臨むとされるが、議会の説得は難航が予想される。

議会は政府の行動計画に対する修正動議を求めることが可能とされ、今後さまざまな立場の議員が独自の修正提案を提出することが予想される。議会はEU側からの再譲歩の結果も踏まえ、どのように離脱合意を修正するか(特に北アイルランド国境問題のバックストップについて)、どのような将来の関係を目指すか(ノルウェー型、カナダ型、秩序だった合意なし離脱など)、議会内の多数派意見の形成をはかるだろう。場合によっては議員間投票なども検討されそうだ。

政府もEUからの再譲歩提案などを足掛かりに、反対票を投じた議員の説得を続けようが、EU側が合意内容の抜本的な見直しに応じる可能性は低い。また、各議員の意見の隔たりは大きく、微修正後の合意内容の受け入れを問う採決を改めて実施するなどを経ても、この段階での意見集約は難しそうだ。3月29日の協議期限までの議会の意見集約は困難と判断し、EU側に協議期限の延長を求める可能性が高まっている。

協議期限の延長には英国を除くEU加盟国の総意が必要となる。EU側は英国内の意見集約や法案審議、さらには政治プロセス(総選挙や国民投票のやり直し)に時間が必要な場合、短期間の技術的な延長には応じる可能性が高い。5月末の欧州議会選挙後の新議会招集が7月上旬にあること、定例欧州首脳会議が6月下旬に予定されていることを踏まえれば、例えば6月29日まで3カ月間の期限延長が1つの選択肢となろう。

とは言え、EU側も無条件で協議期限延長に応じる可能性は低い。メイ首相がどのように議会を説得して離脱合意をまとめるか、明確なプランが求められよう。協議期限延長時に問題となりそうなのが、EU加盟期間が延びることに伴うEU予算の追加拠出(延長料金の支払い)をEU側が求める可能性があることだ。英国側はこれに反発することが予想されるが、最終的には追加予算の拠出に応じるものとみられる。

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