2019年米中貿易戦争はどう展開していくのか トランプ大統領と共和党では目的にズレも

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関税は中国の輸出に打撃を与えるだけでなく、アメリカの消費にもマイナスの効果を及ぼす(写真:ロイター/Yuri Gripas)

「金融市場はドナルド・トランプがアメリカ大統領である事実にようやく気づいた」。2008年の金融危機を的確に予測し「悲観論博士(Dr. Doom)」とも称されているニューヨーク大学のノリエル・ルービニ教授はアメリカ経済が貿易摩擦の影響懸念が高まった2018年12月、このようにプロジェクトシンジケートに記述した。

アメリカ経済は足元では堅調に推移しているが、株価は特に2018年第4四半期以降、乱高下を繰り返し、ビジネスの先行き不透明感は高まっている。2018年の株価は通年でリーマンショックが起きた2008年以来となる下げ幅、12月のみの数値では大恐慌最中の1931年以来の下げ幅を記録した。この不安定なジェットコースター相場は、当面、続くことが予想される。

2019年にアメリカ経済がリセッション入りすることはないとの見方がエコノミストの間では支配的だ。だが、FRB(連邦準備制度理事会)による政策金利引き上げの可能性に加え、減税などの景気刺激策の効果が2019年後半ごろから減退することが見込まれる中、トランプ政権の今後の経済政策に注目が集まっている。

2018年もトランプ政権に関わる政策リスクは存在していたが、好調な経済がそれを帳消しにし経済的影響は限定的であった。トランプ政権の経済政策の中でも、直近で最大リスクとして懸念されているのが、米中貿易摩擦の急速なエスカレートだ。

関税政策の効果を評価する段階に

トランプ政権の通商政策は、2017年は計画段階(Plan)、2018年は実行段階(Do)であったが、2019年は通商対策の影響が徐々に判明し、その評価段階(Check)に入る。そして、早ければ2019年中に政策を改善または改悪する段階(Action)にも入ってくる。米中貿易摩擦についても、戦いは序盤であるものの、すでにビジネスにその影響が出始め、評価段階に入っているといえよう。

貿易赤字を抱えるアメリカにとって「貿易戦争は好ましい、楽勝だ」とトランプ大統領は2018年3月、自らのツイッターで発信した。確かにトランプ大統領は中国に対する追加関税を2018年より発動し、思惑どおり中国経済にダメージを与え始めている。だが、中国はアメリカに対して報復関税を発動するなど対抗し、アメリカにもその影響が及び始めている。

中国の対米輸出は、中国のGDP(国内総生産)総額の約4%を占める一方、アメリカの対中輸出はアメリカのGDP総額の1%弱と、中国の同数値と比べても小さい。これらの輸出に関する数値を比較する限り、追加関税は中国のほうがアメリカよりも被害が大きい。

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