配偶関係別(有配偶者、未婚、死別、離別)に男性自殺者の推移を見ると、より鮮明に離別男性の自殺が増えているかが浮き彫りになります。自殺者が増える前段階の1992年を1としたときの、配偶関係別の自殺者数の伸びを比較したグラフをご覧ください。自殺が増えた2000年以降から現在に至るまで、増加倍率がもっとも高いのが離別男性です。
ソロで生きる力が弱い
逆に、同じ配偶者を失った立場の死別男性の自殺は低下傾向にあります。1人きりになったとしても、離別と死別とでは自殺者の数が正反対の傾向となるわけです。
なぜ、離別した男だけが自殺してしまうのでしょうか?
以前、『なぜ「離婚男性」の病気死亡率が高いのか』という記事にも書いたとおり、離別した男性の「ソロで生きる力」は相当弱いものです。死別の場合は、事故などの突発の事態を除けばある程度事前の覚悟が可能です。
当然、配偶者が亡くなれば喪失感はありますが、死別はいかんともしがたい事情であり、悲しみや寂しさはあっても自己否定にはなりません。しかし、離別は相手による自己の拒絶であり、否定です。
そうでなくても、日本の既婚男性は、極度に配偶者に精神的依存してしまう傾向があります。それほど頼り切っている配偶者から完全なる自己否定を突き付けられるわけですから、離別男性が受ける絶望感は相当なものでしょう。
絶望はストレスを生みます。万病のもとと言われるストレスによって暴飲暴食や過度のアルコール摂取行動が誘引されるリスクもあります。そのため、離別した男性は、未婚男性よりも病気罹患率が高くなります。配偶者以外に頼れる人がいるならまだしも、友人もいないという状態だとなおさら「社会的孤立感」にさいなまれることでしょう。
世間で高齢者の孤独死が話題となりますが、現在孤独死している70歳以上の男性は皆婚時代の人たち、つまりほとんどが元既婚者です。孤独死に至るセルフネグレクト現象は、物理的に生きていながら、精神的に生きるのを放棄した状態であり、「心の自殺」と言えると思います。対して、離別女性は正反対です。そんな状態になるどころか、逆に幸福度があがるから不思議です。
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