スタンフォードの憂鬱…? 大学教員の30代 雇用と業績が双子の不安、踏ん張りどきの過ごし方

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期間内に結果を出さなければ、安住の地はない

経済学の場合、大学院を卒業するとまずはAssistant Professor(助教授)として雇われるのが一般的だ(ほかにもポスドクや講師といったさまざまなポジションがあるが、ここでは話を単純にしつつ進めている)。 助教授というと安定した職のように聞こえるかもしれないけれど、これは期間雇用の契約だ(テニュアトラック期間)。いわば試用期間というところだ。

ここから契約期間中の数年(大学や分野によって多少違うが、だいたい6~7年くらいのところが多いようだ)の間に十分な研究業績が出ているかを評価され、パスすればテニュア=終身雇用となるが、パスしない場合には大学を去らなければいけない。その場合には新たな雇用先を求めて就職活動をすることになる。

テニュアトラックのプレッシャーはかなり強く、その期間中にある若い先生たちの多くは、目をギラギラさせて必死に研究している。というのも、アメリカの研究系大学では、本当に、結構な割合でテニュアを否決されてしまうのだ。ある分野で名の通っている研究者のテニュアを容赦なく否決することは、実際、ウチの大学でもしばしばある。

しかも、テニュア否決は、その大学にいられないというだけでなく、研究業績に対してケチをつけられたという意味を持ってしまう(特に研究の比重が大きい大学では、これが何よりの評価基準とされる)ので、ほかの大学に就職できたとしても、決して気持ちの良いものではないだろう。

著者撮影:なんだかんだいって研究者の世界はのどかかも。モスクワで研究発表した時にホスト(大学院の時の友達)がおみやげにくれたチェブラーシカのぬいぐるみ

というわけで、一見のどかに見える学者業界も――実際かなりのどかだとは思うのだが――いろいろと世知辛い。

業界で使い古された言い回しに、
Publish or Perish
(出版せぬものには死を!)
というのがあるが、完全に冗談で言っているわけではない。

※ちなみに滅多にないことではあるが、数年前にある大学の教員がテニュアをもらえなかったことを恨んで、教授会で銃を乱射するという不幸な事件があった。これは他分野の話で経済学では幸い聞いたことはないが。

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