スタンフォードの憂鬱…? 大学教員の30代 雇用と業績が双子の不安、踏ん張りどきの過ごし方

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歴史に残る研究者たちも順風満帆だけで来ちゃいない!

研究発表風景(著者)。大御所も若手も、発見したことは発表して宣伝する

実際、彼が去年ノーベル賞をもらう理由になったマッチング理論とその応用であるマーケットデザインも、1990年代末から2000年代に入るまでは、(ロス教授は人気論文を何本も書いていたけど)オタクっぽくてニッチな分野、という感じで受け取られることも多かったらしい。

僕自身、ロス教授のもとでマーケットデザインを研究し始めた2005年当時でさえ、「その分野はあんまり面白い話題がないからやめたほうがいいよ」というアドバイスを何人かからもらったくらいだ。

もしかすると、これは経済学だけではなくほかの分野でもそういうものなのかもしれない。以前、フェルマーの定理という有名な数学の問題があるという話をしたのを覚えていらっしゃるだろうか。17世紀の数学者、フェルマーさんが「こういう定理があるよ」と走り書きしたのだが、当時、誰も証明できず、350年を経て1990年代になってやっと証明された、という気が遠くなるような話だ。

これを解決した主人公(のひとり)にワイルズさんという人がいる。彼はフェルマーの定理を解決したときに40歳くらいで、「超若い人がやる分野だぜ」という数学のイメージからすると、それなりの年齢だ。

証明が成される数年前のこと、ある高名な経済学者がとある夕食会でワイルズ氏と一緒になったそうだ。彼から聞いたエピソードは、ちょっとうろ覚えだがこんな感じだったと思う。夕食の席でこの経済学者はワイルズさんに、

「数学者って30歳を超えると重要な仕事できなくなるっていうけど、なんで?」

と聞いたらしい(これを当の30歳を超えた数学者に聞くのは結構すごいような……)。

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