医者の余命告知を真に受けてはいけない理由 人の余命は断定的に言えるものではない

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「余命1ヶ月の花嫁」がテレビのドラマや映画などになって話題になったように、余命告知から始まるドラマや小説が数多くあります。おそらく、その影響もあって、余命1カ月・3カ月と判断できるのが当たり前と考えてしまっているのでしょう。しかし、余命の予測はあたりません。

医者の的中率はどのくらいか

予測された余命が、どの程度の精度であったかという研究が2015年に報告されています(※)。通常、有効な治療がなくなり6カ月以内とされた人が入る緩和施設の研究であり、わが国の緩和ケア施設が59施設も参加した多施設研究です。臨床的に予測した生存日数と実際の生存日数が報告されています。下図の横軸が予測した日数、縦軸が実際の生存日数です。

(画像)Amano K, et al. The Accuracy of Physicians' Clinical Predictions of Survival in Patients With Advanced Cancer. J Pain Symptom Manage. 2015 Aug;50(2):139-46.

横軸の30日、60日、90日、180日の上に黒い点が数多くのっているのは、医師が予測する時に、このような期日を目安に予測していることを表わしています。

横軸の60日や90日の上に打たれている点を見ると、ほぼ0日から180日までまんべんなく広がっています。それ位、医師の予測はあたらないということを表しています。

グラフには3本の斜線が引かれています。真ん中の線が予測と実際の日がピッタリとあたった場合の線です。上の線は予測より33%長く生きた場合、下の線が33%短く生きた場合です。

上下の線にはさまれた部分が、プラス・マイナス33%の範囲であり、予測が60日であれば、40日から80日の間に亡くなられた場合に相当します。このプラス・マイナス33%の範囲内で亡くなった人は35%であり、予測日が長めだったのは45%、予測日が短く悲観的すぎたのが20%でした。

まずは、医師の予測の的中率はこの程度ということを理解してほしいと思います。この調査は、積極的な治療をあきらめ、緩和医療に入った進行がんの患者さんが対象です。がんの進行度がより軽く、これから治療を試みようとする患者さんであれば、結果はバラツキ予測の的中率はさらに低くなります。

がんはゆっくり進行する病気であるために、比較的余命がわかりやすいほうです。ですが、心筋梗塞や不整脈、脳卒中や肺炎などでは、突然なるため予測はより一層難しくなります。

(※)Amano K, et al. The Accuracy of Physicians' Clinical Predictions of Survival in Patients With Advanced Cancer. J Pain Symptom Manage. 2015 Aug;50(2):139-46.(https://www.jpsmjournal.com/article/S0885-3924(15)00161-X/fulltext)
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