東京マラソンを創った男の陸上界「創造と破壊」 ランブーム再び、陸連が取り組むRunLink構想

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コミュニケーション手法について語る早野氏(撮影:尾形文繁)

「僕らは“フュージョンランニング“と呼んでいます。

“Fuse Anything You Like into Running”。あなたの好きな何かをランニングに融合しよう、という考え方です。例えば、音楽。つまりフューズミュージック。ワイヤレスイヤホンやミュージックプレイヤーなど、すでにみなさんお持ちですよね。

人にはそれぞれ走るための理由があって、走った後のビールが最高って人もいる。“こんなランニングの仕方だったらできるかもしれない”と思ってもらえるように、ランニングと何かを融合させた商品を開発しながら、コミュニケーションを取るという考えです」

東京マラソンを通じて、ランナーとのマーケティングコミュニケーションを成功させてきた企業なら、それが全国のマラソン大会で展開できることは、より大きなスケールメリットを得られる。さらに発展できる可能性も示唆しているのだ。

RunLinkの持つ課題

面白いプラットフォームに見えるが、課題もある。

スポーツ業界は1業種1社の排他的なスポンサーシップ制度を取っているところが多い。だがRunLinkは、すべての事業者に広く門戸を開くため、賛助会員制度を採用した。早野氏によれば、現在のところ、賛助会員は検討中の企業も含めて約30社ほどが集まっているという。賛助会員制度が受け入れられ、会員数を増やしていけるか動向を見守っていく必要がある。

資金面の課題もあるだろう。東京マラソンは、東京都の公費が投入されたこともあり、第1回大会から16億5000万円の総予算で始まった事業だ。

RunLinkへ公費が投入される予定はない。陸連からの資金面や人的リソースのバックアップ、企業からの賛助会員費、ランナーからの保険料などの収入が主な事業資本・収入になると思われるが、事業を推進するためにも、早く収益の柱を作っていきたいところだ。

さらに、加盟大会を増やし、ランナーのデータを集める道筋を具体的に示せるかどうかも注目だ。より多くのランナーたちのビッグデータが蓄積されるかどうかが成功のカギである。だが、現在マラソン大会の主催者側が直面している課題の多くは、大会の独自性を出すことやボランティアの確保といった運営面の問題だ。

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