株式市場にひたひたと忍び寄る「下落の影」 上昇はしたが、根本は何も変わっていない
もう1つの株価の好材料とされた、連銀の金融政策だが、1月29日(火)~1月30日(水)にFOMC(連邦公開市場委員会)が開催された。FOMCの声明や直後のパウエル議長の記者会見では、「利上げを様子見できる(しばらく利上げを行なわないことができる)し、保有資産の縮小(量的緩和の縮小)も修正が可能だ」、とされた。
昨年12月には、先行きの金融政策の軌道修正は全くないといった主旨を語っていたパウエル議長が、今年に入っていきなり態度を急変させたことについては、一部メディアが「何か裏があるのではないかという噂が飛んでいる」、と報じている。つまり、皆は全く気が付いていないが、実はパウエル議長の耳にはアメリカの経済において、すさまじく悪いことが起こっている、という情報が入っているのではないか、という観測だ。
さすがにそれは勘ぐり過ぎで、トランプ政権と同様、連銀も12月の株価の急落に恐れを抱いた、念のため慎重にしておこう、という程度だと考える。
ただし、その噂自体は一笑に付すべきだろうが、そうした噂が流れるほど、パウエル議長の急変には違和感を覚えている投資家が多い、という点は要注意だ。つまりいずれ、「逆に連銀は、いきなり引き締め気味の方向へ舵を切り返すのではないか」という疑念が湧いてもおかしくはないからだ。
また、そもそも、FOMCで連銀が発表した内容は、利上げをしばらく様子見するとされたものの、利上げをもうやめることに決めた、というわけではない。量的緩和縮小も、修正が可能だとの意向だが、修正が決まったというわけではなく、決定されるまではこれまでの量的緩和縮小をたんたんと続けることになる。市場では「もう利上げはないに違いない」「量的緩和縮小は停止されるに決まっている」という期待に走ったように感じられる。であれば、いずれ期待は剥落する恐れがある。
まだまだ「鬼」は多い
先行きを展望しても、まだまだ「鬼」は多い。日本では、一部が強く期待しているような、10月からの消費税率引き上げ撤回は、通常国会での安倍晋三首相の発言からは、微塵も感じられない。国内企業の収益見通しは、アナリストの下方修正が優勢な情勢が続いている。
ヨーロッパでは、イギリスがEU離脱の具体策を最終的に議会で承認できるかどうかはまだ不透明で、いわゆる「合意なき離脱」の可能性が高いままだ。先行きの不透明感を反映して、ドイツのIFO指数における先行き指数など、欧州企業の将来に対する景況感は悪化しており、それが設備投資の抑制につながる恐れもある。
またアメリカの財政面では、2月15日(金)までの暫定予算でつないだ状態にあり、そこで政府機関の閉鎖がまた生じる恐れが残る。債務上限については3月まで時限的に停止されているが、それ以降上限が復活し、アメリカの国債が(最終的にデフォルトする可能性は極めて低いと見込むものの)デフォルトするかもしれない、との不安を呼び起こす局面は否定できない。
このように、節分を過ぎても、まだまだ鬼が暴れそうだ。また、これまで繰り返し当コラムで述べてきた、アメリカ経済の景気後退期入りという根幹のシナリオは変えておらず、今年央辺りにかけて、日経平均株価が1万6000円前後に落ちるという予想も変更していない。
こうした流れのなかで、今週は日経平均が何とか2万1000円に挑戦することがありえようが、これまでと同様に超えられないか、超えても一時的だと考える。今週の日経平均の予想レンジは、2万0300~2万1000円とする。
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