株式市場にひたひたと忍び寄る「下落の影」 上昇はしたが、根本は何も変わっていない
昨年12月28日のCNBCテレビの報道によれば、株価急落を受けて、トランプ政権の高官が著名な投資家に接触し、アドバイスを得ていたという。そのアドバイスとは3点あり、1)閣僚を交代させすぎるので、更迭を控えること、2)ジェローム・パウエル連銀議長に「利上げするな」と圧力をかけることは市場の信頼を失うからやめること、3)米中で対立することが株価を押し下げるので、どこかで妥協すること、だったそうだ。
アメリカが中国に妥協しても「元通り」にはならない
つまり、今のところの米中間の交渉は、中国側が譲っているわけではなく、アメリカが折れていると考えられる。中国は、大豆や天然ガスなど、多くの項目で対米輸入を増やすとアメリカ側に伝えているが、ロバート・ライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表など、対中強硬派が対中交渉で重要だと考えているのは、知的財産権の侵害や、先端技術移転の強要、といったところだ。しかし中国側は、そうしたライトハイザー代表が重視するような点では、全く何の譲歩も見せていない。
自国の株価下落におびえ、おろおろしたトランプ大統領は、中国が重要な点に何らの手をつけなくても、中国側が提示してくる「項目だけは多い(そして実質的には余り効果がない)対米輸入拡大策」だけで手打ちをし、口先だけで「私のような偉大な大統領だからこそ、中国が膝を屈してこれほどの数の輸入拡大品目を差し出してきた」と豪語するのだろう。対中強硬派は、以前からトランプ大統領が勝手に中国と適当に手打ちしかねない、という懸念を強く抱いていたそうだが、今のところの通商交渉の推移については、苦々しく感じているに違いない。
とは言っても、アメリカが例えば2000億ドル相当の中国からの輸入について、3月から25%に関税を引き上げることを行なわない、という結果になるとすれば、それ自体はアメリカの経済、ひいては株価にはプラス要因だ。そうした思惑が先週の株価支持要因になった、ということなのだろう。
ただし、既に発動している対中輸入に対する関税を撤廃していく、というところまで遡ることはないだろう。この点では、米中貿易摩擦がアメリカの経済に与える悪影響はゼロにはならないし、先週のような株価の戻りが継続するとも期待しづらい。ましてや、「トランプ政権内の強硬派が今後巻き返しを図る」という展開になれば、本格的な米中対立に至ることも否定はできなくなってくる。
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