39歳男性が非正規から中流に転身できたワケ 日産系列の会社で激しいリストラを経験した

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東海地方の大学を卒業後、日産系列のトラック販売会社に、営業マンとして入社したヨウジさん(編集部撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「今は年収580万円ですが、非正規時代は150万円くらいでした。今でこそ生活は安定していますが、20代でメンタルをやってから30代前半の時期は非正規公務員をしていました。なんで今生きているのは不思議な感じですが、そんなことでよければお話します」と編集部にメールをくれた、39歳の独身男性だ。

かつては日産系列のトラック販売会社に勤務

「日産のカルロス・ゴーン会長らを逮捕 東京地検特捜部」――。

かつて、自分や同僚たちの人生を狂わせた男の転落を伝えるニュースだった。2018年11月、夕方のオフィス。東京都内の団体職員ヨウジさん(39歳、仮名)は、勤務中にたまたま立ち上げたインターネットのポータルサイトで、この速報を知った。ヨウジさんはかつて日産自動車系列の会社に勤務していたが、激しいリストラの真っ只中に置かれたことがある。

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インタビューに応じるゴーン前会長の資料写真を眺めながら、「これが、私から奪った人、上司たちに涙を流させた人かと思いましたが、不思議と憤りとかはありませんでした」とヨウジさん。思い浮かんだのはベタな一節。平家物語の「おごれる者 久しからず」だったという。

ヨウジさんは東海地方の大学を卒業後、日産系列のトラック販売会社に、営業マンとして入社。「よくも悪くも日産らしい。ここで20年も勤めたら、係長くらいにはなれるかなと想像できる、のんびりした社風の会社でした」。年収は400万円ほどだったという。

入社から数年後、当時の石原慎太郎都知事の肝入りで行われた排ガス規制により、多くの事業所が業務用トラックの買い替えを余儀なくされた。業界にとっては特需だったが、営業マンにとっては毎月の残業時間が80時間を超える、いつ過労死してもおかしくない毎日だった。

「1カ月で十数台売れればいいところ、黙っていても30台近く売れるんです。売れて、売れてしょうがない。そんな状態が1、2年は続いたでしょうか」

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